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600m先の人やモノを検知できる長距離LiDARを開発、インフラ分野の安全対策を効率化:第9回鉄道技術展2025(2/2 ページ)
三菱電機は物体検出AIを内蔵した鉄道向け長距離LiDARを開発した。600メートル先の人や障害物を検知可能で、鉄道をはじめとするインフラ分野の安全対策効率化を支援する。
沿線の落下物監視に対応、600メートル先の20センチの物体を検知
長距離LiDARは、鉄道車両に搭載して前方監視に役立てられる他、視野角を調整すれば沿線の落下物監視などにも対応する。水平/垂直の視野角はソフトウェアの設定で変更し(水平方向4.5〜45.0度、垂直方向2.0〜45.0度)、用途に応じて検知対象範囲や空間分解能を容易に切り替えられる。
沿線に定点設置した場合、600メートル先の20センチ程度の小さな落下物も検知できる。従来人手で行っていた台風後の落下物確認作業など、線路上の安全確認の効率化が図れる。
さらに、LiDAR制御装置には、取得した点群から人/車/自転車などの種類を識別する「物体検出AI」を搭載。AIは点群をグラフ構造に変換し、点と点の距離や角度、相対位置などの関係を明示的に表現する深層学習モデルの一種「グラフニューラルネットワーク」を用いて開発した。物体の種類や複数の角度からの形状変化を学習させ、障害物の種類を高速/高精度に識別可能とした。
担当者は「鉄道以外にも高速道路の落下物検知、物流倉庫の安全対策などにも活用できる。インフラ分野の安全確認を効率化する製品として幅広く提案していきたい」と述べた。
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