約7.5kmに及ぶ出雲の堤防地盤沈下対策で、技研製作所の「インプラント工法」が大詰め:導入事例
技研製作所の杭圧入引抜機「サイレントパイラー」を用いた独自の圧入工法「インプラント工法」が、島根県出雲市の神戸川堤防で進められている地盤沈下対策に採用された。工事は延長7.5キロにわたり、うち5.7キロが完了し、大詰めを迎えている。
技研製作所は2025年10月30日、島根県出雲市の神戸川堤防周辺で進められている地盤沈下対策に、製造販売する杭圧入引抜機「サイレントパイラー」による「インプラント工法」が採用され、約7.5キロにわたる圧入工事が大詰めを迎えていると明らかにした。
インプラント工法で連れ込み沈下の被害を抑止
島根県出雲市神戸川流域では、1993年から洪水対策などを目的に堤防が整備されてきた。計画当初は堤防の重みに耐えられる支持力があると考えられていたが、軟弱な地盤が地下深くの広範囲に及び、築堤盛土の重みで地盤が沈下。引っ張られる形で周辺地盤の「連れ込み沈下」が発生し、近くの住宅や納屋に傾きや亀裂が生じ、国が2021年度から抜本的な対策工事に乗り出している。
技研製作所は連れ込み沈下を抑制するため、インプラント工法で地中に「仕切り」となる最長45メートルもの長尺のハット形鋼矢板を設置している。2024年度までに5.7キロの施工が完了し、最終年度となる2025年度は残る1.9キロ(16工区)となっている。リアルタイムで貫入深度や傾斜データを把握できるシステム「インプラント NAVI」との併用で、高精度な施工を実現した。
技研製作所は、地震発生時に液状化や地盤沈下が起こる危険をはらむ土地は河川周辺以外にも、湖沼などを陸地化した干拓地、東京都や大阪府の湾岸エリアに代表される埋立地などがあるとし、インプラント工法を積極的に技術提案していく。
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