検索
ニュース

技研製作所が“圧入”DXで目指す売上高1000億円 東京〜高知の遠隔施工に成功2050年にディーゼル機ゼロへ(1/3 ページ)

技研製作所は、地盤工事でグローバルに展開する「圧入施工」の遠隔操作をデジタルツインで実現した。数百キロ離れた場所にいるオペレーターがラジコンのように操作するだけで、AIの自動調整で杭のズレは10ミリ以内に収まる施工品質が保てる。2024年問題に応じる省人化だけでなく、海外現場で熟練者の配置や人材育成も不要となる。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 「圧入原理」を実用化した杭圧入引抜機「サイレントパイラー」を製造販売する技研製作所は、DX技術を活用した圧入施工の遠隔操作を披露した「開発方針発表会」を2023年10月31日に、東京都江東区有明の東京本社で開催した。

圧入操作の自動化と遠隔化で、「建設2024年問題」に対応

 圧入とは、工場生産された鋼杭やコンクリート杭などの既成杭を地盤中に貫入する既製杭設置方法の1つ。地中に押し込まれた杭を数本つかみ、その引抜抵抗力を反力として、次の杭を油圧による静荷重で、地中に押し込んでいく工法となる。周辺環境に及ぼす振動や騒音が小さく、地盤を乱さず、汚泥が発生しない利点が評価され、オランダアムステルダム運河の護岸工事など国外でも導入事例が増えている。

圧入工法の仕組み
圧入工法の仕組み 提供:技研製作所

 技研製作所の成りたちは、1967年に「公害対処企業」として高知県高知市で創業したのが始まり。1975年には、世界初とする「圧入原理」を実用化した無振動かつ無騒音の杭圧入引抜機「サイレントパイラー」を発明した。

 1986年には、打ち込んだ杭の上を移動し、仮設足場が要らず、狭小地でも杭圧入施工を可能にする「GRBシステム」、1997年に独自の芯抜き技術で硬質地盤を克服する「硬質地盤クリア工法」、2004年に回転切削圧入でコンクリートも貫通する「ジャイロプレス工法」を開発。近年は圧入工法にITを採り入れ、地盤情報を推定して最適に自動運転する「PPTシステム」に加え、施工中の杭データを杭先端に取り付けた360度プリズムとトータルステーションで、5カ所の座標データを計測して施工管理を行う「インプラント NAVI」も実用化した。

圧入工法のこれまでの歩み。「PPTシステム」と「インプラント NAVI」
圧入工法のこれまでの歩み。「PPTシステム」と「インプラント NAVI」 提供:技研製作

 今後の事業目標を代表取締役社長 森部慎之助氏は、「長期ロードマップ“GIKEN GOALS 2031”の計画最終年度となる2031年度に、事業規模拡大×生産性向上で、1人当たりの売上高1億円とし、会社全体で売上高1000億円を達成させる」と展望を明らかにした。

技研製作所 代表取締役社長 森部慎之助氏
技研製作所 代表取締役社長 森部慎之助氏 筆者撮影

 実現までの道のりでは、「当社は、くい打ちに関してはトップランナーと自負しているが、圧入施工には技術や経験が不可欠だった。建設業界の人材不足が問題となっている今、技術開発で自律化/無人化施工を成功させ、その技術力を国内のインフラリメーク技術の確立や建築分野への進出、さらに国内での知見を拡大させる形で欧州、アジア、北南米を中心とした海外展開までにつなげたい」(森部氏)。

 しかし、事業戦略の前に立ちはだかっているのが、「労働力人口の減少」「脱炭素化」「気候変動による災害の激甚化」「インフラ老朽化」といった顕在化しつつある社会課題だ。特に、差し迫った“2024年問題”に起因する労働力不足の深刻化に対し、自動化や遠隔操作技術で対策を講じることで、海外での現場支援効率化や市場での優位性を得るとの方針示した。

GIKEN GOALS 2031
GIKEN GOALS 2031 提供:技研製作所

 その自動化と遠隔化の軸となるのが、「iNAVILINK(アイナビリンク)」と「G-Lab Vision(Gラボビジョン)」。iNAVILINKは、施工中の杭データを取得する“インプラント NAVI”と、圧入機の状態を計測するIoTセンサーとを組み合わせ、施工状況を数値化してAIが自動で補正する自動化施工を担う。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る