津波シミュレーターを北海道の教育機関に寄贈、巨大地震の津波に耐える堤防を体感:レジリエンス
技研製作所は、津波に対する防災意識の向上を目的として、北海道立教育研究所に小型の津波シミュレーターを寄贈した。貯水槽から水を押し出し、防潮堤の模型に水流をぶつけ、構造の違いによる耐津波性能を検証できる。
技研製作所は2025年5月9日、津波に対する防災意識の向上を目的として、北海道立教育研究所に小型の津波シミュレーターを寄贈したと発表した。
研究所は北海道が設置する教育に関する研究や教育関係職員への研修などを行う機関で、津波シミュレーターは道内の児童や生徒を対象とした防災教室、津波に対する地元住民への啓発活動などに幅広く活用する。
インプラント堤防の耐津波性能を体感できるシミュレーター
シミュレーターは持ち運び可能で全長1.5メートル、全幅35センチ。15リットルの貯水槽から水を押し出し、200分の1スケールの防潮堤模型に津波を模した水流をぶつけ、波高6〜7メートルに相当する津波を再現できる。技研製作所の提唱するインプラント堤防と、既存堤防の耐津波性能を比較可能だ。
インプラント構造は、鋼矢板や鋼管杭を地中深くに連続して打ち込み、地震動による液状化、地盤沈下、側方流動、津波などの外力に対して粘り強く耐える。既に、東日本大震災で被災した岩手県沿岸部や南海トラフ地震に備える高知県沿岸部などでの採用が進んでいる。
北海道では、日本海溝や千島海溝沿いで巨大地震の発生が危惧されており、子供や地域住民の防災意識の向上が課題となっていた。
技研製作所は、2015年に33分の1スケールの防波堤が有する耐津波性能を検証できる津波シミュレーターを自社開発。高知県の本社に設置して各種デモンストレーションや実験に用いていたところ、北海道立教育研究所から小型津波シミュレーターの製作でアドバイスの依頼を受けたことが契機となり、今回の寄贈に至った。津波シミュレーターの活用で、津波の威力と構造の違う堤防の強度を理解してもらい、技研製作所の技術普及にもつながると期待を寄せている。
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