関係者が同時に“体験しながら設計を決める”、没入型設計レビュー空間「TELEPORT 1/1」を日本初展開:VR(2/2 ページ)
ダッソー・システムズは、複数人が実寸大のVR空間で同時に設計レビューや意思決定を行える「TELEPORT 1/1」を東京都品川区の大崎オフィスに開設した。VRヘッドセットを装着した関係者が同一空間を歩き回り、建築物や工場レイアウトを実寸大で確認しながら設計検討し、早期の合意形成が実現する。
工場の設計支援や病棟のレイアウト検討で実績
ダッソー・システムズは2018年からフランス国内でTELEPORT 1/1を運用してきた。これまで2拠点のセンターを通じて、製造業の設備設計や病院施設の運用計画、文化財の研究などを支援した。
パリの総合病院では、新病棟のレイアウトを検討するデザインレビューにTELEPORT 1/1を活用。その後、医師や看護師など実際に働くスタッフ約100人にもVR空間で動線や設備配置を確認してもらった。約200件に上る改善提案が寄せられ、プロジェクトに反映させた。
航空機スタートアップでは、組立工場のレイアウト設計レビューに採用し、3つの異なる配置シナリオを比較検討して最適な組立動線を導出した。また、化粧品メーカーでは、新パッケージングラインの構築時に、ラインオペレーターやメンテナンス担当者も設計レビューに参加。運用者の視点で安全性やアクセス性を事前検証してもらい、ライン設計に反映することで、プロジェクトのリスク低減につなげた。
万博フランス館にも採用、日本での展開へ
TELEPORT 1/1は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)フランス館の設計支援にも活用された。フランス館を担当するCOFREXと連携し、パビリオンのバーチャルツインを構築。空間設計の最終決定過程において、建築・文化遺産博物館のTELEPORT 1/1を活用したワークショップを実施した。フランス館に関わる建築家やアーティスト、音響エンジニアなどが実寸大の空間で動線を検討。仮想空間を体験することで、設計変更が可能な段階で、「通路が低く頭がぶつかりそう」「展示の高さを低くしたい」といった図面では分からなかった干渉お問題を確認し、反映したという。
フランス館は会期終了後に解体されるが、バーチャル空間上には記録が残る。これにより文化的価値を未来に継承できる。
日本の“すり合わせ”文化と同時体験型レビューに親和性
ゴドブ氏は日本での展開について「日本企業では、実際に製造や施工に移る前に入念な準備を行う文化がある。バーチャル空間で事前に確認/検証できるこの仕組みにより新たな価値を提供できると考えた」と説明。
ダッソー・システムズ 技術本部 インフラストラクチャ&アセットマネジメント シニアマネジャー 齋藤能史氏も、「複数の関係者が一堂に会して合意形成する“すり合わせ”文化と、TELEPORTの同時体験型レビューは相性が良い」と述べ、製造、建設の両分野で導入を進めていく方針を示した。
ダッソー・システムズは、TELEPORT 1/1を通じて、日本の建設/製造/インフラ分野におけるバーチャルツイン技術の普及を加速させる考えだ。従来の設計支援ツールを超え、関係者が「体験しながら決める」次世代の意思決定基盤となることを目指す。
ゴドブ氏は「当社が目指すのは、デジタル技術で人間の想像力を拡張することだ。TELEPORT 1/1は、バーチャルツインを『見るもの』から『共に体験するもの』に進化させた。日本の産業界に体験を共有できる新しい場を提供していきたい」と結んだ。
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