自動打設と養生温度制御で覆工コンクリート施工を効率化 奥村組ら:山岳トンネル工事
奥村組と北陸鋼産は、自動打設と養生温度制御の2つのシステムを山岳トンネル工事に適用し、打設作業の省力化と脱型前養生の効率化を実現した。
奥村組は2025年10月3日、北陸鋼産と共同開発した覆工コンクリート用の「自動打設システム」と「養生温度制御システム」を、中日本高速道路 名古屋支社発注の「東海環状自動車道養老トンネル北工事」に適用したと発表した。両システムの導入により、打設の省力化/省人化と、脱型前養生効率化による生産性向上を図った。
自動打設システムは、奥村組が開発した「高速打設システム」と「圧力計による打設高さ検知システム」を組み合わせ、圧送ポンプ機のリモコンとバイブレータの制御盤を連動させたもの。事前に設定した打上がり高さに合わせて、ポンプの圧送速度やポンプとバイブレータの稼働/停止を自動制御し、打設口の切り替え作業を除く覆工コンクリートの打設を自動化する。
ポンプ圧送や締固めなどの作業は定量データに基づいて行われるため、技能労働者の熟練度に依存せず、安定した品質を確保できる。現場適用前には奥村組の技術研究所で実大規模の施工実験を実施し、システムの有効性を確認した。
養生温度制御システムは、材齢1日程度の若材齢コンクリートの温度と強度発現の相関関係を基にコンクリート温度を測定し、養生からセントル脱型までの圧縮強度をリアルタイムに算出。測定したコンクリート温度に応じて、面状発熱体への電力供給を自動制御し、所定の時刻までに脱型に必要な強度を確保する。これにより、覆工コンクリートを適切な温度で養生し、セントルの存置時間を効率的に管理できる。
奥村組と北陸鋼産は、奥村組が施工する東海環状自動車道養老トンネル北工事で両システムを適用。表面剥離やひび割れなどの不具合はなく発生せず、脱型時に必要な強度を十分に確保できることを確認した。
覆工コンクリートの施工の一般的なサイクルタイムは約2日とされるが、今回のシステム適用により、セントルの脱型/移動/据付が約3時間、休憩が約2時間、コンクリートの打設作業が約5時間、翌日の脱型までのコンクリートの養生が約14時間と、計1日(24時間)で完了した。
型枠脱型から打設完了までを同日に行う「セットコン」を週1回実施することで、覆工コンクリートの施工が、月当たり150メートル(1スパン12.5メートル×12回)の進捗が可能になり、生産性が向上した。
奥村組は今後、他現場への適用を進め、施工結果をフィードバックしてさらに効率化を図る。また、覆工コンクリートだけでなく、山岳トンネル施工全体の生産性向上を目指した開発を進めていく。
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