解体後の構造部材を新築建物にリユース、大林組技術研究所の実験棟「オープンラボ3」第1期完成:サーキュラーエコノミー
東京都清瀬市の大林組技術研究所で、解体建物の構造部材をリユースした実験棟「オープンラボ3」の第1期部分が完成した。
大林組は2025年7月28日、東京都清瀬市の大林組技術研究所実験棟「オープンラボ3」の第1期部分が完成したと発表した。既存建物解体後の鉄骨やコンクリート製構造部材の形状と性能を活かし、新築建物の構造体にリユースした。
リユース材による柔軟な設計/施工を実現
オープンラボ3第1期部分は2025年6月30日に完成した。
まず、技術研究所内の既存建物「電磁環境実験棟」を解体するにあたって、事前に部材の状態を調査し、ほぼ全てが再利用可能だと確認。リユース可能な状態で確保するために、切断位置の検討や運搬時の荷重などに配慮しながら解体作業を行った。鉄骨部材は既存のボルト接合のボルトを1本ずつ分解し、コンクリート部材は運搬しやすいサイズで切り出した。
取り出したコンクリートや鉄骨は隣接地の資材保管場所や鉄骨工場に運搬し、新築建物の骨組みとしての加工、損傷/劣化や外形寸法の確認を実施した。敷地外に運び出すことで、遠隔地での計画にリユースする場合の検証も併せて実施した。
リユースするコンクリートの基礎/基礎梁(ばり)/床は、プレキャスト部材と同様設置精度の確保や接合部を微調整しながら配置。接合部分に新規のコンクリートを打設し、新築計画の平面形状に合わせた骨組みとした。地上の鉄骨もリユース鉄骨を主体に、不足する部分に新規部材を追加。施工は通常の鉄骨工事と同様の手順で行い、リユース特有の制約はほとんどなかったという。
リユースした構造部材は新材と外観上の違いがほぼなく、完成後には判別が困難になる。このため、鉄骨のリユース材には赤色の塗料を施した。
今回の工事では、解体建物の実験棟から取り出した部材を新築の鉄骨作業場に転用した。クレーンを設けるなど用途が大きく異なる建物でもリユース材による柔軟な設計/施工が可能だと実証したと報告している。
大林組は今回の工事で、構造部材のリユースに関するコスト圧縮や工期短縮に適した部材の選定、取り出し方法などの実践的なノウハウを蓄積した。さらに、部材のトレーサビリティや再利用履歴の可視化、リユース材の品質管理の高度化にも取り組む。
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