AIがコンクリート発注数量を自動算出、奥村組などが未打設領域の判定モデル構築:AI
奥村組とNTTドコモソリューションズは共同で、コンクリート打設工事におけるコンクリート発注数量を自動で算出するAIモデルを構築した。
奥村組とNTTドコモソリューションズは2025年9月25日、建設現場のコンクリート打設工事におけるコンクリート発注数量を自動で算出するAIモデルを構築したと発表した。技術検証では、画像認識AIが特定の条件下で、未打設範囲を97.5%以上の精度で認識できると確認した。
両社が開発したAIモデルは、画像認識AIがコンクリートの未打設領域をリアルタイムかつ高精度に判定する。未打設領域の実測が不要になることで作業工数が低減できる。さらに、判定結果をもとに必要なコンクリート数量を自動算出することで、過不足のない発注が可能となる。現場の生産性向上に加え、資材や廃棄コストの低減効果も見込める。
画像認識AIは、複数のコンクリート打設現場で撮影した画像におけるコンクリート未打設領域を、セマンティックセグメンテーションを用いて学習させている。この画像認識AIに、近距離撮影で発生する画像のゆがみを補正する技術を組み合わせて高精度な判定を実現した。
両社は2024年12月から2025年5月にかけて、画像認識AIによるコンクリート未打設領域の判定精度を評価するための技術検証を実施。物流倉庫やマンションなどの建築現場で、コンクリート打設場所に設置したカメラから定期的に取得した画像をもとに、事前に設定された計測範囲内の未打設領域を自動判定した。
検証の結果、20(縦)×10(横)×0.2(厚さ)メートルの範囲と想定した場合、コンクリート未打設領域を97.5%以上の精度で認識することを確認。併せて、画像認識AIによる判定結果が、コンクリート発注数量の自動算出に実用可能な水準の精度で、判定画像に機材や人物が映り込んでいる場合でも、映り込んでいない場合と同程度の精度で判定できることを確認した。
サービス提供開始に向け建設現場での運用実証を開始
両社は今後、コンクリート発注数量の自動算出サービスの実現に向けた建設現場での運用実証を開始し、AIモデルによる発注数量の算出精度や、現場作業の工数低減効果などの実用性を確認する。現場利用者からのフィードバックを受けながらAIモデルの有効性を確認し、現場のニーズに即したサービスの実現を図る。同AIモデルを活用したサービスは、NTTドコモソリューションズのゼネコンコラボのラインアップとして、2025年度内の提供開始を予定している。
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