建設業の人材確保/育成へ中小事業者支援に70億円など 国交省/厚労省2026年度概算要求:産業動向
国土交通省と厚生労働省は、建設業の人材確保/育成に向けた2026年度予算概算要求の概要をまとめた。建設業技能者の深刻な高齢化を受け、特に若者や女性の入職や定着の促進に重点を置きつつ、担い手の処遇改善、働き方改革、生産性向上を一体として推進する。
国土交通省と厚生労働省は2025年9月1日、建設業の人材確保と育成に向けた2026年度予算概算要求の概要を発表した。建設業技能者の深刻な高齢化を受け、人材確保、人材育成、魅力ある職場づくりの3分野で支援策を展開する。
建設業技能者のうち60歳以上の割合が約4分の1を占める一方、29歳以下は全体の約12%にとどまっている。両省は将来の建設業を支える担い手の確保が急務として、特に若者や女性の入職や定着の促進に重点を置きながら、担い手の処遇改善、働き方改革、生産性向上を一体として推進する。
予算要求では、人材確保から育成、処遇改善までを横断的に支える施策として「担い手確保等を通じた持続可能な建設業の実現」に6億6000万円の内数を計上。適正な工期設定などによる働き方改革の推進、ICT導入に関する調査などを通じた生産性向上の促進、入職促進に向けた魅力発信事業などに取り組む。
また、雇用管理改善や人材育成に取り組む中小建設事業主などを対象とした助成金での支援に70億円、また、出前授業や現場見学会などを通じて高校や高等専門学校の先生/生徒と建設業界の接点を設ける「『つなぐ化』事業」の実施に2900万円を計上した。
人材確保の分野では、ハローワークにおける人材不足分野のマッチング支援に55億円を要求する。人材育成分野では、建設労働者育成支援事業による中小建設事業主などへの支援に4億9000万円、建設分野におけるハロートレーニング(職業訓練)の実施に1億2000万円、ものづくりマイスター制度による若年技能者への実技指導に26億円など。
さらに、魅力ある職場づくりの推進に向けては、働き方改革推進支援助成金による支援に101億円、働き方改革推進支援センターによる支援に30億円、雇用管理責任者などに対する研修の実施1億円などを計上した。安全衛生関連では一人親方などに対する安全衛生確保支援事業に1億7000万円、墜落/転落災害などの防止対策推進事業に8600万円を要求している。
CCUSの普及促進を強化
両省は、建設技能者の処遇改善や技能の研さんを目的に推進する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の普及促進にも取り組む。人材確保等支援助成金の中で、中小建設事業主が実施するCCUSを活用した雇用管理改善の取組を支援するほか、CCUSカード登録者の賃金助成額を1.1倍にする措置を2026年度末まで延長する。さらに、建設業の就職を希望する求職者に対してCCUS登録済み建設事業主の求人情報を提供し、応募を勧奨する。
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