建物解体後の鉄骨やコンクリ構造部材を新築建物にリユース、大林組:脱炭素
大林組は、建物解体後の鉄骨やコンクリート製の構造部材を、新築建物の構造体に再利用する取り組みに着手した。新築建物の構造部材のうち、鉄骨57%、コンクリート33%でリユース材を使用し、構造部材製造に伴うCO2排出量を従来と比較して約49%削減する見込み。
大林組は2024年6月27日、建物解体後の鉄骨やコンクリート製の構造部材を、新築建物の構造体にリユース(再利用)する取り組みに着手したと発表した。2024年6月に着工(解体工事含む)した東京都清瀬市の大林組技術研究所内実験棟オープンラボ3新築工事で実施する。竣工予定は2026年9月。
計画では、新築建物の構造部材のうち、鉄骨57%、コンクリート33%でリユース材を使用し、構造部材製造に伴うCO2排出量を従来と比較して約49%(65.8t-CO2)削減する見込み。大林組によると、1つの建物から全種別の構造部材を取り出し、新築建物の構造体としてリユースする取り組みは、国内で初めて。
建物解体後の鉄骨やコンクリート製構造部材は、一般的に、溶解や破砕された後に新たな建材としてリサイクルされる。建物の構造体のリユースは、これまでコンバージョンやリノベーション、耐震改修などでは実績があり、CO2排出量の削減効果が検証されている。一方で、これらの手法は柱や梁(はり)の位置や形状などを大きく変えないことが前提となるため、設計上の制約があることが課題だった。
今回の工事では、解体する実験棟の柱、梁、ブレースなど全種別の鉄骨部材を撤去し、鉄骨製作会社が新築建物に合わせて切断などの加工を施した後、再び構造体に使用する。基礎、基礎梁(ばり)、小梁、床など全種別のコンクリート製構造部材も、新築建物の平面形状に合わせて切断した上で、新築現場の加工ヤードで接合部を加工し、現場で新材と接合する。この手法でリユースすることにより、使用場所を限定せず、スパンも変更可能となり、より自由度高く構造部材を有効活用できる。
なお、建築確認申請と構造適合性判定の審査を受け、建築基準法に適合することを確認している。
今回の工事は自社の技術研究所の新築工事であることから、研究員が直接解体建物の構造体の状態や、リユース材の加工状況などを検証し、迅速な技術改善や新たな技術開発につなげていく。
オープンラボ3新築工事では、総建築面積1213.49平方メートル、総延べ床面積2143.79平方メートルの研究所を建設する。1期では鉄工作業所(S造、地上1階)、2期では研究エリアと木工作業所(S造、地上3階)を整備する。
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