飛島建設と応用技術が「サイバー建設現場」開発 BIM/CIMモデルで工事現場を再現:デジタルツイン
飛島建設と応用技術は、4D対応のBIM/CIMモデルを用いたデジタルツインプラットフォーム「サイバー建設現場」を開発した。
飛島建設は2025年7月23日、応用技術と共同で、デジタルツインプラットフォーム「サイバー建設現場」を開発したと発表した。クラウド上にBIM/CIMモデルで工事現場を再現し、現場の状況や進捗を共有できる。
サイバー建設現場は、CADソフトや高性能PCが不要で、PCやタブレットなどの一般的な端末とインターネット接続環境があれば利用できる。扱える情報は、カメラのリアルタイム映像、GNSSによる位置情報、各種センサーの計測値、気象/騒音などの環境データ、ICT施工データなど多岐にわたる。
新システムは、国土交通省発注の「令和4(2022)年度荒川第二調節池排水門及び囲繞堤新設工事」でのBIM/CIM活用の一環として開発。地盤改良やコンクリート打設などの施工情報の一元管理に活用した。
4Dモデルにも対応し、過去の実績モデル、現在モデル、未来の計画モデルを時系列で確認できる点も特徴だ。施工計画の作成や教育、協議の場面での活用を想定している。
サイバー建設現場では、Autodesk Docs(Autodesk Construction Cloud含む)にアップロードした多様な形式の図面やBIM/CIMモデルを閲覧できる。クラウド上で常に最新のモデルが確認できるため、現場関係者間の情報の齟齬を防ぎ、円滑な意思決定を支援する。工程情報を基にAutodesk Navisworksで構築した4Dモデルも閲覧可能で、工程シミュレーションやリスク評価にも対応する。
また、BIM/CIMモデルに任意の属性情報を随時付与可能で、ICT施工で取得した実測データや作業進捗状況なども取り込める。これにより、入力工数の削減とヒューマンエラーの低減に寄与する。モデルが変更されても、付与済みの情報は自動で引き継がれる。
さらにBIM/CIMモデルを活用したシミュレーション機能も備える。水位データを基にした浸水予測や、建設機械の配置シミュレーションによる干渉確認が可能。機械の3DモデルはAutodesk Docsにアップロードすることで即座に利用可能となる。
API連携によるデータの汎用的な出力にも対応。気温やひずみなどの時間情報を持つデータをグラフ化して現場状況を視覚的に把握できる。施工進捗のリアルタイム監視や、重機の稼働状況分析、人員配置の最適化といった管理業務の高度化にも対応する。
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