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BIM/CIMも点群もストレスゼロ。“サクサク”動く建設DXマシンの実力を徹底検証BUILT主催「建設DXセミナー 2025 春」レポート

建築や土木の設計現場では建設DXの進展に伴い、BIM/CIMや点群などの大容量データとともにAIを扱う機会も日常的になり、最適な設計環境の構築が課題となっている。その最適解として日本HPは、AMDの最新プロセッサを搭載した最新ワークステーション2機種をリリース。BUILT主催の建設DXセミナーで語られた建設業界の課題に対する両製品の有用性について、建設系ソフトウェアでの動作検証を交え、詳しく解説する。

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 日本HPは、BUILT主催で2025年4月18日に開催した「建設DXセミナー 2025 春〜脱3Kから新3Kへ導く建設現場のDX〜」に登壇。「BIM/CIM/点群全て任せろ!次世代HPワークステーションご紹介」と題して講演した。本稿ではセミナーレポートで講演内容を振り返るとともに、登壇者へのインタビューを通して最新ワークステーションのスペックを深掘りする。

建設DXで避けて通れないPCの課題

日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長 大橋秀樹氏
日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長 大橋秀樹氏

 講演冒頭、日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長 大橋秀樹氏は、建設DXが普及するにつれ、現場で顕在化しているPC環境の課題を3つ挙げた。

 1つ目はデータの肥大化だ。大橋氏は「BIM/CIMデータは属性情報を含むため、データ量が膨大になる。製造(製作)や施工など後工程でのBIM/CIM活用を見据えると、設計段階であらかじめ詳細な情報を入れるフロントローディングが必要で、そのためには処理能力の高いPCが不可欠になる」と指摘する。また、トータルステーションやドローンなど測量機器の高性能化と低価格化により、現場を膨大な点から成る点群データでデジタルツイン化するケースも増えていることも一因としてある。

 2つ目はMicrosoft Copilotなど生成AIツールへの対応。業務の自動化や効率化を支える技術として、AIは既に日常業務に浸透しており、AI処理に最適化されたハードウェアはもはや必須となっている。

 3つ目は省エネ性能。CPUやGPUの高性能化とともに消費電力の増加は避けられず、電気代や燃料費の上昇を踏まえ、エネルギー効率の高い機器の選定は重要なテーマとなっている。

 こうした課題を解決するソリューションとして日本HPは2025年3月から順次、新製品を市場に投入。今回の講演では、その中からデスクトップ型ワークステーション「HP Z2 Mini G1a WorkstationデスクトップPC(以下、Z2 Mini G1a)」と、ノート型「HP ZBook Ultra G1a 14 inch Mobile Workstation PC(以下、ZBook Ultra G1a)」を紹介した。

片手サイズに本格性能のミニワークステーション「Z2 Mini G1a」

 Z2 Mini G1aは、Miniの名の通り、片手に収まるほどのコンパクトな筐体ながら高性能さを兼ね備えるミニワークステーション。

「HP Z2 Mini G1a Workstation」
「HP Z2 Mini G1a Workstation」

 マシンの核となるプロセッサにはAMDの「Ryzen AI Max PRO」シリーズを採用。AMDが2025年1月に発売したCPU/GPU/NPUを1チップに統合したSoC(System on a Chip)だ。最上位の「Ryzen AI Max+ PRO 395」では、16コア/32スレッドのCPUに加え、40基のコアユニットを備えたGPU「Radeon 8060S」、さらに演算能力を示す指標「TOPS(Tera Operations per Second)」で50TOPSのNPU「XDNA 2」を装着。NPUはMicrosoftの「Copilot+ PC」の要件も満たし、クラウドを介さずにローカル環境でのAI処理に対応する。設計作業だけに限らず、日常の帳票や資料の自動生成といった業務効率化にもつながる。

AMDの「Ryzen AI Max PRO」シリーズ
AMDの「Ryzen AI Max PRO」シリーズ 提供:日本HP、AMD

 メモリは最大128GBのシェアードメモリで、うち最大96GBをグラフィックス処理のビデオメモリ=VRAMに利用できる。従来の小型ワークステーションのVRAMが8〜16GB程度だったことを考えると、驚異的な数値といえる。VRAMはアプリケーションごとに4GB、8GB、16GBと柔軟に割り当てられるので、自動設定を有効にすれば、使用状況に応じて最適なメモリ容量を自動で割り当ててくれる。BIOS設定をいちいち変更する必要がなくなり、3Dモデリングや建築ビジュアライゼーションの制作でストレスなく高いパフォーマンスを引き出せる。

 ISV(Independent Software Vendor)認証も取得済みで、CADやCGなど建設系ソフトウェアにも正式対応。信頼性を重視する業務現場にも安心して導入できる。

 消費電力の低さも見逃せないポイント。Ryzen AI Max PROの消費電力はわずか120ワット。プロセッサ内部の配線幅は4ナノメートルまで微細化されており、同一面積あたりの集積度が高く発熱も抑えられる。

 設置の自由度が高いのも、小型モデルならではの利点だ。デスクの上はもちろん、モニター背面に取り付けたり、ラックにまとめて搭載したりもできる。4Uサイズの専用ラックには最大5台まで収容可能で、省スペースでの設置にも適する。I/O(入出力)機能も充実しており、最大8台のモニターを接続。電源は筐体内蔵で外付けACアダプターを必要とせず、電源ケーブル1本だけで稼働する。

 冷却設計にも抜かりはない。銅製の大型ヒートシンクとデュアルファンによる冷却構造、前後パネルに格子状の通気構造を採用し、効率的に排熱。長時間の高負荷作業にも耐えうる構造を実現している。

14インチで現場にも持ち運びができる設計環境

 ZBook Ultra G1aは、薄型/軽量のノート型筐体でありながら、Z2 Mini G1aとほぼ同等の高性能プロセッサを内蔵する。メモリは最大128GBのシェアードメモリで、一般的な14インチモデルの上限となる64GBを大きく超える。Z2 Mini G1a同様にシェアードメモリのため、用途に応じてVRAM容量を自動で最適化。日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長 若宮明日香氏は、「建築設計やBIM/CIM、点群データを扱う際、従来はレンダリングやモデリング用に別のPCを併用することが多かった。本製品はGPUの活用をシームレスに切り替えられるため、1台で作業が完結する」と自信をみせる。

メモリは最大128GBのシェアードメモリ。使うソフトウェアやアプリケーションによってVRAM容量を自動的に最適化する
メモリは最大128GBのシェアードメモリ。使うソフトウェアやアプリケーションによってVRAM容量を自動的に最適化する 提供:日本HP、AMD

 ZBook Ultra G1aもCopilot+ PCに準拠し、キーボードには専用のCopilotキーを配置。AI機能を身近に使える製品設計となっている。

 ノートブックとしてはプロセッサの消費電力を55ワットに抑えつつ、バッテリー駆動でも高い実用性を確保。若宮氏は「展示会で大容量の3DCADデモデータを動かし続けたところ、電源なしで約6時間の駆動を確認した」と話す。

日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長 若宮明日香氏
日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長 若宮明日香氏

 冷却については、ノート型であれば一定の発熱は避けられないが、背面ヒンジ部に設けられた大型の排気口が放熱をしっかりとサポートし、キーボード面の温度上昇を抑制。点群データ表示などの高負荷時でもフリーズすることはない。

 若宮氏は「これまで14インチのワークステーションは、性能面でノートPCの延長とみられていたが、ZBook Ultra G1aはその常識を覆す存在。従来は16〜17インチの機種でしかできなかった作業も、軽量でコンパクトな筐体でこなせる。14インチでこれほどの処理性能を持つワークステーションは他にない」と、ノート型ワークステーションの新たな選択肢として提案した。

ノート型ワークステーション「HP ZBook Ultra G1a 14 inch Mobile Workstation PC」
ノート型ワークステーション「HP ZBook Ultra G1a 14 inch Mobile Workstation PC」

従来のワークステーションの概念を一新するスペックを徹底検証

 若宮氏が「常識を覆す存在」と評するように、ZBook Ultra G1aはコンパクトな筐体にプロフェッショナルの要求に応える高い処理性能を凝縮している。その実力を示すべく、Autodesk製品のユーザーコミュニティー「AUG-JP」の榊友幸氏と芳賀百合氏、AMDの協力のもと、詳細な検証結果を報告した。

 使用したのは、Ryzen AI MAX+ PRO 395とRadeon 8060S、128GBのメモリ、32GBのVRAMを設定した最上位構成モデル。対象はAutodeskの「AutoCAD 2025」や「Revit 2025」「Civil 3D 2025」「Navisworks Freedom 2025」「ReCap Pro 2025」、ライカジオシステムズの「Cyclone REGISTER 360 PLUS 2025.0.0」「TruView 2024.0.2」など、BIM/CIM、点群を扱う代表的なソフトウェア/アプリケーション群だ。

 検証の結果、数十GB規模のBIM/CIMデータや億単位の点群データで、回転/ズーム、表示切り替えは終始スムーズで重くなるなどの現象は一切見られなかった。大橋氏は「設計者やデザイナーからは、動作のカクつきや遅延がストレスになる声をよく聞く。そのストレスから解放され、制作に集中できることで、より創造性を高められる」と強調した。

AMDによるRevit 2025の検証結果
AMDによるRevit 2025の検証結果 提供:日本HP、AMD
Civil 3D 2025の検証結果
Civil 3Dの検証結果 提供:日本HP、AMD

 若宮氏は、最近の建設現場で活用が進むドローンやスキャナーによる点群データについて言及。「大容量データをダウンサイズさせずに、そのまま現場へ持ち出せる点もポイントが高い。これまで時間が掛かっていたデータ軽量化の手間が不要になり、元データをプレゼンやコンペ、工事現場で扱えるため、その場で修正して早期の合意形成が図れる」と語り、機動性の高さがもたらす利点を強調した。

TruView 2024.0.2での点群動作の検証結果
TruView 2024.0.2での点群動作の検証結果 提供:日本HP、AMD

 検証を経て大橋氏は、「ZBook Ultra G1aは、14インチの小型でありながら高い処理性能と安定性とを両立。BIM/CIMはもちろん、点群データにも対応し、オフィスと現場をシームレスにつなぐ次世代のワークステーションとして設計プロセス自体を変える可能性を秘めている」と述べ、講演を締めくくった。

AUG-JPによるBIM/CIM、点群系ソフトウェアのベンチマーク結果 ※Revit 2025はAMDが検証
ソフト名 検証データ 検証者コメント
AutoCAD 2025 ソリッドデータ(DWG2018形式)12.7MB/10.4MB ・全くストレスない動作で回転、ズームもカクつかない
・ハードウェアアクセラレーションON、グラフィックス設定も全てグリーンで問題なし
Navisworks Freedom 2025 ソリッドデータ(NWD形式)3.0GB ・ドローンの点群(水色)+地上型レーザースキャナー(カラー)+CAD図面の合成でも軽快動作
・ビュー切り替えもスムーズ
・Navisworks Manageでも同様の操作性
Civil 3D 2025 ソリッドデータ(DWG2018形式)23.7MB ・回転、ズームもストレスなし
・操作画面、オブジェクトビュワーもスムーズ
ReCap Pro 2025 UAV写真測量点群(RCP形式)1.1億点/263MB ・ズーム、回転ともにカクつきなし
・ヒートマップが鮮明(ドライバの完成度が高い印象)
Cyclone REGISTER 360 PLUS 2025.0.0 地上型3Dレーザースキャナー(Leica BLK360 G2)60スキャン/5億点/85.6GB ・85.6GBのプロジェクトを約45分で展開完了
・発熱はあるが冷却ファン性能が高く、キーボード面も熱くならない
・使用率と温度の推移がグラフで確認できて安心
TruView 2024.0.2 点群データ(LGSX形式)60スキャン/5億点/6.38GB ・回転、ズームもスムーズ
・シェード(点群エッジ強調)を有効にしても問題なく描画

 日本HPはZBook Ultra G1aの発売を記念し、現在150台限定で特別価格39万6000円〜(税込み)と送料無料、HP 3WAYトート型バッグも付いてくるキャンペーンを展開中だ。この機に、最新のモバイルワークステーションで可能になる新たな設計環境をぜひ体験してもらいたい。

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提供:株式会社日本HP
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2025年8月3日

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