クレーン統合制御システム開発、デジタルツインで安全性向上 大林組:デジタルツイン
大林組は、クレーン作業の安全性と生産性向上を目的とした統合管理/制御システム「ORCISM(オーシズム)」を構築し、埼玉県川越市の自社東日本ロボティクスセンター内に実証フィールドを新設して検証を開始した。
大林組は2025年5月28日、クレーン作業の安全性と生産性向上を目的とした統合管理/制御システム「ORCISM(オーシズム)」を構築し、埼玉県川越市の自社東日本ロボティクスセンター内に実証フィールドを新設して検証を開始したと発表した。
ORCISMは、作業支援機能「クレーンマシンガイダンス」、遠隔/自動運転による省人化や技能補完を行う「クレーンマシンコントロール」、生産性向上とセキュリティ確保を実現する「クレーンマシンマネジメント」の3つの機能から成る。
これらの機能をデジタルツイン上で統合管理することで、仮想空間でクレーンと周辺の障害物の接近を検知し、現場でアラートを発する他、デジタルツイン上で吊(つ)り荷の揺れを常時監視し、現場で減速停止させることが可能になる。これにより、危険作業を未然に防止が期待される。
ORCISMは他の安全技術とも連携可能で、吊り荷の姿勢制御装置「スカイジャスター」や、無資格者の機械操作を防ぐ「フェイスターター」などと組み合わせられる。マシンガイダンス機能では、安全で効率的なクレーン操作を支援する。
東日本ロボティクスセンターの実証フィールドでは、クレーン作業に関する安全性向上、省人化、技能補完や生産性向上などを目的とした技術開発を行う。720トンメートル級と360トンメートル級のタワークレーンを各1基設置。遠隔/自動/自律運転に対応する遠隔操作室も設置し、デジタルツイン上で周辺環境を再現して、仮想空間での指示や判定をリアルタイムに現場へ反映する仕組みを構築した。
大林組は今後、実証フィールドでORCISMの技術的な検証と改良を重ね、「危険作業を未然に防止するクレーン」の実現を目指すとしている。
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