大手ゼネコン5社と免制震装置メーカー3社、杭メーカー1社がRevit用の免制震装置と杭のファミリ公開:BIM
オートデスクは、スーパーゼネコン5社、大手免制震装置メーカー3社、杭メーカー1社と共同で、免制震建物の設計でニーズの高いオイルダンパーや耐震ブレース、既製コンクリート杭などのRevit用ファミリを共同整備し、Webサイト上で公開した。
オートデスクは2025年6月19日、免制震装置メーカー3社(川金コアテック、センクシア、日鉄エンジニアリング)、杭メーカー1社(日本ヒューム)、大手建設会社5社(大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店)の協力の下、BIMソフトウェア「Autodesk Revit」の構造用ファミリとして、新たに構造系の免制震装置と杭のファミリを共同整備し、公開した。
免制震装置と杭で設計〜生産のRevit連携が可能に
これまで設計業務では、設計事務所や建設会社が異なるソフトウェアや独自のルールによってデータを作成しているため、各部材のモデルに含まれる属性データが異なり、設計から生産・施工・維持管理などの各プロセスでデータ連携ができないケースが多々あった。
こうした課題に対し、大林組、清水建設、大成建設が共同で、Revitによる設計・施工の効率的な業務プロセスの構築を目指した「BIM Summit」を2016年に発足。その中で組織された「BIM Summit 構造分科会」で、構造設計用 Revitファミリの整備に向けた活動を行ってきた。
分科会では、2018年12月から共同整備した鉄骨構造用ファミリを提供開始し、2019年6月に鉄骨構造系部材ファミリを拡充した。2020年7月には鹿島建設も参画して、RC構造系の柱/梁(はり)ファミリ、2022年2月には竹中工務店も参画して基礎/杭ファミリ、壁/床のパラメータを発表した。
2024年1月には中高層木造建築の普及や拡大に対応し、木造ファミリも追加。2024年8月には、大手免震装置メーカーのオイレス工業とブリヂストンの協力で免震装置ファミリとして、天然ゴム系積層ゴム、鉛プラグ入り積層ゴム、高減衰積層ゴムを共同整備した。
今回提供するファミリは、前回に続き大手免制震装置メーカーの川金コアテック、センクシア、日鉄エンジニアリングと協力し、免制震建物の設計でニーズの高いオイルダンパー(制振、免震)、耐震ブレース、制振ダンパー、球面すべり支承、鋼製ダンパーを共同で整備。既製杭メーカーの日本ヒュームと既製コンクリート杭も整備した。
免制震建物や既製杭を設計する際、設計者はメーカーからカタログやCADデータを取り寄せて自前でファミリを作成していた。メーカー提供の製品ファミリがある場合でも、製品ファミリでは設計符号の管理や型番の選択、配置の方法などが設計者の利用方法に合っておらず、設計フローに沿った使い方ができなかった。
こうした課題に対し、設計者、メーカーともに利用がしやすいように、“入れ子の構成”とした免制震装置や既製杭ファミリを整備した。設計者が直接編集を行うホストファミリ(親ファミリ)には設計符号や型番といった設計情報、メーカー整備のネストされたファミリ(子ファミリ)には装置や部材の詳細な情報が含まれている。
免制震装置のホストファミリ(親ファミリ)はBIM Summit 構造分科会が、ネストされたファミリ(子ファミリ)は分科会監修の下で各メーカーが作成した。ファミリの公開は、免制震装置のホストファミリ(親ファミリ)と手順書はオートデスクのWebサイト、ネストされたファミリ(子ファミリ)は各メーカーWebサイトで提供する。
既製杭は、ホストファミリ(親ファミリ)、ネストされたファミリ(子ファミリ)、手順書ともに、BIM Summit 構造分科会が監修してメーカーが作成し、メーカー側のサイトで公開する。
今回提供する免制震装置や既製杭のファミリも、これまでのファミリと同様に生産・施工するために必要な設計データの種類について、異なる組織間でも円滑に使えるように整備されており、パラメーターを使用した効率的な構造設計ができる。そのため、設計情報を生産工程でも利用できるようにし、複数の組織間や業務プロセスをまたいだ生産性向上が期待できる。
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