木造/RCの混構造、愛知県立春日井高校の1号棟が完成 住友林業:木造/木質化
住友林業が施工に関わった、中央部を木造、両端部をRC造とする平面混構造3階建ての「愛知県立春日井高等学校」1号棟校舎が完成した。
住友林業は2025年4月15日、施工に関わった「愛知県立春日井高等学校」の1号棟校舎が完成し、利用を開始したと発表した。新校舎は中央部を木造、両端部をRC造とする平面混構造の3階建てで、木造部分が1500平方メートルを超える耐火建築物としては愛知県の公立高等学校では初の木造校舎となる。
基本設計と実施設計は松田平田設計が、木造部分の構造設計は住友林業が担当。施工は住友林業と春日井市に拠点を置く高柳組が分担した。建築面積は2273.17平方メートル、延べ床面積は4786.16平方メートル。
新校舎建築にあたっては、梁と柱、壁面や床などに約525立方メートルの木材を使用し、このうち約85%(約454立法メートル)には愛知県産材を採用した。中央部分に位置する教室は木造で、今後施工する昇降口についても純木造で構造躯体を現しとし、木質感のある空間として設計した。
耐震性強化に向けては、木造と鉄筋コンクリート造をピン接合した一体構造とした。木造部分は鉄筋ブレースを設置することで耐震性を高め、地震発生時には地震力が鉄筋ブレースを通じて鉄筋コンクリート造部分に伝わる。この構造により壁面の筋交いなどの斜材を削減。窓枠の開口が広く取れ、明るく開放的な学習環境を実現する。また、木造はRC造に比べて基礎にかかる荷重が小さいため、基礎規模を抑え建設コストの低減にも寄与する。
外観は切妻の大屋根とバルコニーを用いた軒下空間設計で、天井高を確保しながら空気の循環を良好にし、外壁への雨がかりを防止する。さらに再生木ルーバーを採用して日射遮蔽効果を高めるとともに、木造部の外壁には住友林業のオリジナル木材保護塗料(S-100)を使用し、耐久性を向上させた。
新校舎建築に伴うエンボディドカーボン(資材調達、製造、運搬、建設、修繕、解体時のCO2排出量)は「One Click LCA」で算定。炭素固定量は約104トンCO2e bio(CO2ベース)で、40年生のスギ約1200本の炭素固定量に相当する。また、外装にバルコニーやルーバーを導入して冷暖房効率を向上させることで、建物の利用時に発生するオペレーショナルカーボンも削減した。
今回の設計には、生徒が木の質感に触れながら自然や環境に関心を持つことを促し、環境教育につなげる狙いがあるとされている。今後は、既存校舎(2号棟)と新校舎をつなぐ渡り廊下と昇降口の施工、旧1号棟校舎の解体が進められる。完工は2026年3月の予定。
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