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StarlinkやLPWAなど建設DXに欠かせない“通信環境”【土木×ICTのBack To The Basic Vol.3】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(31)(1/2 ページ)

遠隔臨場をはじめ、遠方とのコミュニケーション、建機や人の位置情報、点検ドローン、巡回ロボットなどの活用で、今や建設現場で通信環境の確保は必須となっています。ここ数年は山間部のトンネル工事や電波が届かない不感地帯でStarlinkの導入が進み、建機の遠隔操作や現場状況を仮想空間にリアルタイムで再現するデジタルツインが実現しています。

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 AIやICTが身近になったことで建設現場にも導入され、現場を仮想空間に再現する“デジタルツイン”による建設DXが進んでいます。実現には、現場の情報をリアルタイムに取得することが必要となり、センサーやスマートフォンのような端末がインターネットにつながるIIoT(Internet of Things)技術が重要性を増しています※1。国土交通省でも、下図のように道路やトンネル照明、CCTVカメラ、多重無線装置、非常用発電機など多数の電気通信設備の設置や運用管理を行っています※2

河川や道路などの主要な電気通信施設
河川や道路などの主要な電気通信施設 出典:※2

連載バックナンバー:

“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト

本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。

※1 『構造物のモニタリング技術』編:日本鋼構造協会/

※2 国土交通省「電気通信技術ビジョンについて」

 ICT施工などではデータの処理などでクラウドサービスを使うことも増えており、現場での通信確保が求められます※3。空間的な広がりがあり、日々状況が刻々と変わる工事現場のデータ収集には無線通信が適しています。

※3 「建設施工段階におけるデジタルツインを構成するデータ基盤の開発」山中哲志,湯淺知英,西川輝,安田晋,毛利亮太/AI・データサイエンス論文集4巻3号p924-931/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2023年

 電波の存在は、1864年英国のジェームズ・クラーク・マクスウェル(James Clerk Maxwell)によって理論的に提唱されました。1888年にドイツのハインリヒ・ルドルフ・ヘルツ (Heinrich Rudolf Hertz)がその存在を実証し、1895年にイタリアのグリエルモ・マルコーニ(Guglielmo Marconi)が電波でモールス信号を送る実験に成功したのが無線電信の始まりです。今日に至るまで、わずか100年余りで急速に発展した技術なのです※4

※4 総務省「平成4(1992)年版 通信白書」

 電波には周波数があり、周波数が低い電波は障害物を回り込んだり、減衰しにくかったりなどの性質を有し、長距離通信に適していますが、周波数が高い方が多くの情報を伝えられます。一方で、利用するには高い周波数の方が扱うのが難しくなります。こうしたトレードオフの関係があることから、30MHzから30GHz付近の周波数帯域が、移動体通信をはじめとして利用ニーズの大きい帯域になります※5。IoTに用いられる各通信方式の特長を整理したのが下図です※6

IoTに用いる各通信方式の特徴
IoTに用いる各通信方式の特徴 出典:※6

※5 総務省「電波利用ポータル」

※6 総務省「IoTを支える通信技術としての5G」

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