野村不動産、生物多様性保全のアクション策定 住宅/都市開発事業に導入:生物多様性
野村不動産は、生物多様性保全のために取り組む内容をまとめた「Link NATURE Action」を策定した。住宅事業と都市開発事業を対象に順次導入する。
野村不動産は2025年3月18日、生物多様性保全に向けた具体的な取り組みを示す「Link NATURE Action」を策定したと発表した。住宅事業と都市開発事業を対象に、緑化や在来種の採用、生物多様性認証の取得などを推進。ネーチャーポジティブ(自然再興)達成への貢献に加え、自然と人とが共生できる環境の実現による「ウェルビーイング」向上を目指す。
野村不動産は、MS&ADインターリスク総研、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、シンク・ネーチャーの3社の監修を受け、ネーチャーポジティブを実現するための定量指標と取り組みの内容をまとめた。
新築分譲マンション「プラウド」、賃貸マンション「プラウドフラット」、健康増進型/賃貸シニアレジデンス「オウカス」などの住宅事業と、ビルや物流施設などの都市開発事業を対象に順次適用する。策定した指標を物件単位で達成することで、開発物件増加に伴いネーチャーポジティブの実現につながることを意図している。
まず緑化率は、行政が定めた緑化基準の110%以上を原則とし、建築前後で緑量が増加していることを確認する。行政の緑化基準がない場合でも、最低3%以上の緑化面積を確保するなどの対応を取る。次に、地域に根差した在来種を積極的に採用する。植生調査や文献調査をもとに周囲の自然と調和した設計とし、在来種の割合を60%以上(中高木は本数、低木地被類は面積)とする。併せて、外来種の排除や樹木の自然樹形を重視した剪定、薬剤散布を最小限にした維持管理などにより、鳥や蝶などの生き物にとって住みやすい環境を整える。定性指標として、大規模物件での生物多様性認証の取得原則化、生態系に配慮した植栽の維持管理、社員教育や環境コミュニケーション活動を実施する。
建物計画では木造ハイブリッド構造の採用や木造共用棟の設置などにより木材利用を推進する他、住宅事業の全物件で内装材への木材使用を原則としている。木材利用の徹底で植林/保育/収穫の森林サイクルを促し、適切な生態系保全と自然災害の防止、脱炭素につなげる。
住宅事業では、首都圏のプラウドシリーズを皮切りに、2024年7月以降に設計を開始した物件から順次対応している。現在約80物件が取り組みに則って計画中だ。都市開発事業では、2025年度計画物件から適用する。
野村不動産はこれまでも、不動産事業や街づくりにおいて、「ABINC認証(いきもの共生事業所認証)」「JHEPJHEP(ハビタット評価認証制度)」「SEGESSEGES(社会/環境貢献緑地評価システム シージェス)」など生物多様性認証の取得を推進してきた。大規模複合開発「BLUE FRONT SHIBAURA(ブルーフロント芝浦) 」では、周辺地域との生態系ネットワークの構築や植栽の在来種比率80%強を実現。「プラウドシティ武蔵野三鷹」では既存樹を可能な限り残し、周辺生態系との調和を図る緑地計画であることが評価され、ABINC認証を取得した。
同社は今後も、同取り組みで定めた定量指標の達成や生物多様性認証取得などにより、ネーチャーポジティブ実現に向け取り組みを強化していく。
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