大気中のCO2をコンクリートに固定、万博会場で利用 鹿島と川崎重工:脱炭素
鹿島建設と川崎重工業は、川崎重工のDAC技術により大気から回収したCO2を利用し、鹿島建設らが開発したCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM」を製造した。新技術で製造した舗装ブロックは、大阪・関西万博「CUCO-SUICOMドーム」のエントランスの一部に敷設した。
鹿島建設と川崎重工業は2025年3月12日、川崎重工の直接空気回収(DAC)技術により大気から回収したCO2を利用し、鹿島建設らが開発したCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」の製造に成功したと発表した。
川崎重工のDACは、独自開発の固体吸収材によって大気中からCO2を直接分離/回収する。今回、1日当たり5キロ以上のCO2を99%以上の高純度で回収できるコンテナ型の新装置を開発し、新装置とCO2-SUICOMにCO2を吸収/固定させる炭酸化養生槽を組み合わせたシステムを構築した。プレキャストコンクリート製品メーカー日本興業の協力を得て実証実験を行った結果、所定のCO2固定量と、コンクリートとしての品質確保を確認した。
CO2-SUICOMは、コンクリート製造時にCO2を吸収/固定することで、CO2排出量を実質ゼロ以下にできる技術。これまで炭酸化養生に使用するCO2は外部から購入しており、CO2の調達手段が課題となっていた。
実証実験では、炭酸化養生槽に舗装用のCUCO-SUICOMブロックをセットし、高濃度CO2を炭酸化養生槽に封入。CO2を2日間、吸収/固定させた。新システムで製造したCUCO-SUICOMブロックは、CO2-SUICOM製のブロックと同等のCO2固定量と曲げ強度を有していることを確認している。
新システムを使用して製造した舗装ブロック「CUCO-SUICOMブロック」は、大阪・関西万博「CUCO-SUICOMドーム(愛称:サステナドーム)」のエントランスの一部に敷設した。両社は今後、プレキャストコンクリート製品工場での本格的な製造に向けて、必要なCO2量を踏まえたDAC装置の検討などシステムの高度化を進める。これらの取り組みにより、コンクリートに吸収/固定させるCO2の地産地消を目指す。
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