大気中のCO2を回収する“DAC“をカーボンネガティブコンクリに活用へ 鹿島と川崎重工が共同研究:脱炭素
鹿島建設と川崎重工は、大気中のCO2を直接回収する技術を、製造過程で排出されるCO2排出量が実質ゼロ以下のカーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM」の製造に利用するための共同研究を開始した。
鹿島建設と川崎重工は2024年7月26日、大気中のCO2を直接回収する「DAC(Direct Air Capture、直接空気回収技術)」を、製造過程で排出されるCO2排出量が実質ゼロ以下となるカーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」の製造に利用するための共同研究を開始したと発表した。両社は今後、プレキャストコンクリート製品工場向けのDAC装置の構成を検討し、CO2-SUICOMの製造実証を行う。
DACは、大気中からCO2を分離/回収する技術の総称だ。川崎重工が保有するDACでは、CO2の吸収に適した多孔質材料とアミン化合物から成る固体吸収材を使用し、CO2の分離/回収を行う。
一方、鹿島建設などが開発したCO2-SUICOMは、製造時にCO2を吸収/固定することでCO2排出量を実質ゼロ以下とするコンクリートだ。プレキャストコンクリートの製品工場で炭酸化養生を行うことで、CO2を吸収/固定する。
しかし、現状では炭酸化養生で使用するCO2を外部から購入している。そのため、CO2-SUICOMの普及展開にあたって、CO2の調達手段が課題になっていた。鹿島建設は、カーボンネガティブコンクリートの製造に必要なCO2を必要な場所で適時調達できるDACに着目し、川崎重工との共同研究をスタートした。
両社の技術を組み合わせ、回収したCO2を貯留する「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage、CO2分離/回収/貯留技術)」に取り組むことで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。
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