鹿島建設が「理論の学習」×「実務の体験」の研修施設「鹿島テクニカルセンター」を開設:導入事例
鹿島建設は、「FEEL&THINK」をメインコンセプトに掲げ、社員が五感で感じ考える研修施設「鹿島テクニカルセンター」を開設した。
鹿島建設は2023年5月23日、若手や中堅社員の品質管理能力を早期かつバランスよく高めることを目的に、神奈川県横浜市鶴見区に実務体験型研修施設「鹿島テクニカルセンター」を開設したと明らかにした。
今後、施設での新たな実務体験型研修を通じ、鹿島グループ社員の「現物をしっかり見て的確に判断できる目」を養うことで、品質管理能力を一層高め、建物品質のさらなる向上につなげていく。
実物大の各種モックアップを設置し、見て、触れて、組み立てを体験
鹿島建設では、現場を担う若手や中堅の技術系社員には、早期かつバランスのとれた品質管理能力の習得を求めている。一方、建設工事は一品生産であり、建物用途や使用する工法も数多く、工程の進捗度も工事により異なる。そのため、従来のOJTによる教育だけでは、習得できる技術やノウハウが限られ、同世代の社員間でも習得技術に偏りやばらつきが生じることが課題だった。そこで課題解決に向け、鹿島テクニカルセンターの整備を進めることとした。
鹿島テクニカルセンターの規模は、RC造一部S造/木造地上5階建て、延べ床面積5809平方メートル。所在地は神奈川県横浜市鶴見区元宮1-19-8で、2022年12月に竣工した。
施設内の研修エリア(1〜2階)には、実物大の鉄骨や鉄筋コンクリート造の構造部材および設備機器などを設置した。研修生は、モックアップを目で見て、手で触れ、鉄筋の組立てなどを体験することで、品質管理に欠かせないポイントを学び、理解を深められる。近くには、グループワークやミーティング用の討議エリアを配置し、モックアップを見ながら討議を行える環境を整えた。
研修生には、施設に滞在している間の時間を有効に活用してもらい、短期間での技術習得を目指す。宿泊エリア(3〜5階)には個室を81室、各階にはラウンジを配置し、研修生同士が交流できる場を数多く設けている。
研修生が、木の持つ建築や家具材としての質感、リラックス効果を五感で感じることができるように、鹿島グループが国内に所有する約5500ヘクタールの保有林から伐採した木材を活用。施設の宿泊室や一部耐震壁に採用したCLT(Cross Laminated Timber)の一部には保有林の杉、全ての宿泊室および施設の要所に設置した家具には保有林のハルニレやミズナラなどを使用している。
施設には、鹿島建設が開発した3つの緑化技術として、屋上緑化システム「エバクールガーデン」、壁面緑化システム「緑彩マルチパネル.RT」、外構緑地システム「DEWレインガーデンTM」を導入した。加えて、コンクリートの製造過程でCO2を吸収・固定することでカーボンネガティブを実現するコンクリート「CO2-SUICOM」を外構の一部に採用。さらに、通常は廃棄処分する戻りコンクリートを原材料として再利用することでCO2排出量を抑えるコンクリート「エコクリートR3」を構造体や外構の一部に用いている。
こうした環境配慮型の技術を研修生が間近に見ることで、環境問題への意識を醸成していくのが狙いだという。
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