鹿島建設の保養所建設で森林資源の循環利用、CO2-SUICOMの適用拡大も:サーキュラーエコノミー
鹿島建設は、軽井沢に完成した自社保養所において、木材の循環利用によるサーキュラーエコノミー推進やCO2-SUICOMの適用拡大を実現した。
鹿島建設は2025年1月28日、長野県軽井沢町の自社保養所「KX-FOREST KARUIZAWA 鹿島軽井沢泉の里保養所」で、木材のサーキュラーエコノミーに取り組むと共に、環境配慮型コンクリート「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」の適用拡大を実現したと発表した。
社有林材と現地伐採木を新築/改修に活用
鹿島建設はグループ全体で全国約5500ヘクタールの山林を100年以上にわたり保有している。維持管理を含めた森林経営の一環として、建材/家具への活用、木造/木質建築の技術開発、木材サプライチェーン構築や新たな環境価値の創出に取り組んでいる。
鹿島軽井沢泉の里保養所は、社員の余暇の充実や柔軟な働き方の実現、福利厚生の拡充などによるワークライフバランスやエンゲージメントの向上を目的に整備し、2024年10月に竣工した。豊かな自然が残る2万288平方メートルの自社所有地に、周囲に溶け込むヴィラタイプの木造の宿泊棟(新築)14棟と共用棟(改修)1棟を建設。設計・施工は鹿島建設が手掛けた。
鹿島建設は保養所で、(1)社有山林と現地伐採木を活用した木造宿泊施設の新築/既存木造施設の改修、(2)国内宿泊施設で初めて国際的な環境認証「SITES (サイツ)」予備認証での最高認証ランク「プラチナ」取得、(3)金沢工業大学のセメント系3DプリンティングとCO2-SUICOMを組み合せた人道橋の構築の3点を実施。
新築/改修では、環境省の自然共生サイト認証も受けた自社所有の福島県「日影山山林」と、建設地現地で伐採した樹木を、建築資材や家具の材料に使用。自社施設に社有林を活用することで、木材サプライチェーンの上流(山主)から下流(建設)までを一貫で行い、伐採後に再び造林して育てるという循環型の取り組みを実現する。既存木造建築物の効率的な改修により、建物の長寿命化も図る。
環境評価認証のSITESは、ランドスケープにおける環境配慮のための取り組みが周辺環境や利用者にどのように寄与するのかを評価するもの。保養所は、敷地固有の課題抽出を目的とした敷地調査から施工、運営管理に至るまでの総合的な計画で持続可能な開発アプローチや生態系保全ができていること、環境負担軽減が図られていることなどが評価され、2024年9月にプラチナの予備認証を取得した。今後は各フェーズにおける計画を実現し、2025年に本認証取得を目指す。
また、金沢工業大学と共同研究中のCO2-SUICOMを3Dプリンティングで成形する技術を、人が通行する構造物に初めて適用し、敷地内に長さ7.0×幅1.86〜1.92メートルの人道橋を構築した。3Dプリンティングにより自由度の高い造形が製造できることに加え、生産性向上や環境負荷低減などの効果を確認した。↓built_20250131_01_06.jpg,3Dプリンティング×CO2-SUICOMによる人道橋の構築までの流れ,3Dプリンティング×CO2-SUICOMによる人道橋の構築までの流れ 出典:鹿島建設プレスリリース
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