CO2収支マイナスのテトラポッドを開発 製造時の排出量112%削減:製品動向
鹿島建設と不動テトラは、製造工程のCO2排出量が実質ゼロ以下の「カーボンネガティブコンクリート」を使用した消波ブロック「CUCO-SUICOM(クーコスイコム)テトラポッド(CUCOテトラ)」を開発した。一般的なコンクリートで製造したテトラポッドと比較して、製造段階のCO2排出量を112%削減できたという。
鹿島建設と不動テトラは2024年1月25日、製造工程のCO2排出量が実質ゼロ以下の「カーボンネガティブコンクリート」を使用した消波ブロック「CUCO-SUICOM(クーコスイコム)テトラポッド(CUCOテトラ)」を開発したと発表した。ブロック完成までの全工程を現場で実施できることを確認し、完成品は一般的なコンクリートで製造したテトラポッドと比較してCO2排出量を112%削減した。
炭酸化養生技術を活用し、CO2の吸収量と固定量を増大
鹿島建設は、デンカ、竹中工務店とともに、NEDOグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクトを実施するコンソーシアム「CUCO(クーコ)」の幹事会社を務めている。CUCOでは民間企業や大学、研究機関が連携して、カーボンネガティブコンクリートの開発を進めている。
CUCOテトラは、NEDO事業で開発した薄型のコンクリート製品「CUCO-SUICOM型枠」で得た知見をで得た知見をもとに開発した製品だ。製造時にあらかじめCO2を吸収/固定した炭酸カルシウムを大量配合するとともに、CO2を封入した槽内でコンクリートを養生してCO2を安定な形で吸収/固定する「炭酸化養生」を行う。これによりCO2の吸収量と固定量を増やす。
一般的なコンクリートで製造した場合と比較して、製造時に排出されるCO2を100%削減し、12%を吸収/固定する。さらに、炭酸化養生によりコンクリートの表面が低アルカリ化し、海洋生物との親和性を向上した、より環境保全に適した製品だとした。
なお、「テトラポッド」は不動テトラの登録商標。
炭酸化養生を行うコンクリートは、これまでプレキャストコンクリート工場で製造、出荷されるのが一般的だったが、今回、初めて市中のレディーミクストコンクリート工場で製造と出荷を行い、静岡県熱海市の「熱海ビーチライン」の屋外製造ヤードで打設、脱型、炭酸化養生を実施。完成までの全ての工程を、現場で実施できることを確認した。今回は耐久性試験のため、海岸付近の陸上に設置した。
鹿島建設と不動テトラは今後、製造過程で得た課題を解決し、耐久性試験などを経てCUCOテトラの早期の社会実装を目指す。
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