トンネル再生覆工をプレキャスト化、1枚30分で設置し工期短縮 西松建設:山岳トンネル工事
西松建設とPCL協会は、山岳トンネル再生覆工の高速化に向けて、側壁一体型PCL版と専用の運搬/架設装置を開発した。従来の場所打ちコンクリートによる再生覆工と比較して、52.5メートル当たり約7日の工程短縮が見込める。
西松建設は2025年3月10日、山岳トンネル再生覆工の効率化を目的に、PCL協会と共同で、側壁一体型PCL(プレキャスト コンクリート ライニング)版と、専用の運搬/架設装置を開発したと発表した。
実証実験の結果、PCL版と装置を組み合わせて使用することで、PCL版1枚当たり30分(積み込み、運搬、架設)で設置できることを確認。従来の場所打ちコンクリートによる再生覆工と比較して、約7日(52.5メートル当たり)の工程短縮が見込めるとした。
山岳トンネルの覆工コンクリートを補修/補強する「覆工再生工」は、一般的に供用中のトンネルで実施されるため、コンクリート打設箇所付近へのポンプ車の配置や生コン車の待機スペース確保が難しい場合がある。また、コンクリート圧送時の配管トラブルや交通障害が発生すると、工期遅れが発生するリスクがあった。
従来のPCL工法は、トンネル上半部にPCL版を採用し、下半部は現場打ちコンクリートで側壁を構築していた。新技術では、PCL版を天端から下半脚部までの側壁一体型に改良。場所打ちコンクリートの施工を省略可能にした。
併せて開発したPCL版の運搬/架設装置は、フォークリフトに装着して使用。側壁一体型PCL版を損傷せず、効率的に運搬/架設できる。フォークリフトのツメ部と連結し、トンネル周方向に対する「ピッチング機能(PCL版の傾き調整機能)」や「ヨーイング機能(PCL版の回転調整機能)」など架設時の微調整機能を備えた。重量バランスをとるためのカウンターウエイトも装備し、トンネル軸方向と軸直角方向(鉛直、水平)の調整にはフォークリフトの機能を活用する。
模擬トンネルで実大実証試験を実施
西松建設では新技術を検証するため、山岳トンネル技術開発拠点「Nフィールド」の模擬トンネルで実大実証試験を実施した。覆工再生工事での施工で、高速道路トンネル断面級の規模を想定。実証実験の結果、PCL版や、実施工を想定して設置箇所背面に敷設したシートに損傷はなく、工場製作のPCL版を使用した再生覆工が構築できることを確認したとしている。
また、側壁一体型PCL版の採用により、場所打ちコンクリート施工に伴う配管閉塞のリスクや打設時の型枠崩壊リスクなどがなくなるため、品質や安全性の向上が期待できる。西松建設は今後、新技術を覆工再生工事に適用する計画で、高速施工に伴う車線規制期間の縮減と生産性向上に取り組む。
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