新小仏トンネル工事、照明による注意喚起や紙管での発破騒音低減を実施 清水建設:山岳トンネル工事
清水建設と東亜建設工業は、中央自動車道新小仏トンネル工事において、坑内の薄暗さを利用した照明機器による安全対策や、低周波音減衰装置を活用した騒音対策を実施している。
清水建設は2024年12月17日、東亜建設工業とのJVが施工中の中央自動車道新小仏トンネル工事(東京都八王子市〜神奈川県相模原市)の坑内で推進している安全への配慮/環境負荷低減に関する取り組みの進捗と、その成果について発表した。
狭く薄暗い作業空間で安全を確保するため、薄暗さを利用した照明による路面表示を活用する他、低周波音減衰装置を導入した騒音対策などを実施している。
交通標識を地面に投影し、注意促す
安全対策では、照明機器を活用して路面にプロジェクションマッピングで「止まれ」などの交通標識を表示する他、ライン照明の赤線で一時停止ライン、緑線で安全通路の範囲を示している。表示は重機の運転手からも認識でき、車両が表示上を通過しても汚損や摩耗の心配がない。照明機器は二次覆工コンクリートの打設に使用する全断面スライドフォーム(セントル)、防水シート張り台車、路面に立てる交通標識看板に設置しており、照明機器単体の移設作業は不要だ。
また、坑内の車両通路の幅員/高さを狭めるセントル、防水シート張り台車では、内法に沿って赤色のチューブライトを設置し、点滅表示させている。多数の作業員が使用するセントルの昇降階段には、下部階段と上部階段の手すりにそれぞれ桃色、白色のチューブライトを設置した。
紙製の低周波音減衰装置を導入し、高い吸音効果を発揮
発破作業に伴う低周波騒音対策では、王子ホールディングスと共同開発した紙製の低周波音減衰装置(吸音シリンダー)「KAMIWAZA」を採用し、20Hzの低周波音をターゲットに吸音を図った。
シリンダーは406(直径)×3000(長さ)ミリ、呑(の)み込み口は76(直径)×350(長さ)ミリ、重さは18キロ。新小仏トンネルでは計250本を設置、2(間口)×1.6(奥行き)メートルの収納枠に、吸音シリンダー20本(5本×4列)を納めてブロック化し、フォークリフトやトラッククレーンでブロックごとに移設した。
吸音効果の実測値は、建具のがたつきを発生させる5〜20Hzの低周波音に対し平均1.5デシベル、20Hz付近で10デシベル、重厚な防音扉でも対応が難しいとされる8Hz付近で3デシベルの減少を確認。騒音のエネルギー量換算では、もともとの低周波音に対して1.5デシベル低減は1/1.4に、10デシベル低減は1/10に、3デシベル低減は1/2に減少した。
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