英国でS造オフィスを木造増改築、ライフサイクル全体のCO2排出量削減 住友林業と芙蓉総合リース:木造/木質化
住友林業と芙蓉総合リースは、英国ロンドンで、木造増改築によるオフィス開発「Golden Laneプロジェクト」を開始した。S造5階建てオフィスを取得し、1〜4階部分はS造の既存オフィスの構造を保存しながら改修工事を実施、5〜6階部分をマスティンバーによる木造で増築する。
住友林業と芙蓉総合リースは2025年1月20日、英国ロンドンで、木造増改築によるオフィス開発「Golden Lane(ゴールデン レーン)プロジェクト」を開始すると発表した。既存オフィスを活用した改修と木造の増改築を実施することで、環境配慮と賃貸面積の拡大による収益性の向上の両立を図る。総事業費は約2280万ポンド(日本円で約45億円)。2024年12月に着工し、2026年1月の完成と賃貸開始を目指す。
資材製造から建設工事完了までのCO2排出量を6割削減
プロジェクトでは、1900年代初頭に建築されたS造5階建てオフィスを取得し、1〜4階部分はS造の既存オフィスの構造を保存しながら、内装工事や環境性能を向上する改修工事を実施。5〜6階部分は、複数の木材を組み合わせて成形した大型の木質部材「マスティンバー」による木造で増築する。
建物を解体/再建築したり、S造で増改築したりする場合と比較して、建物のライフサイクル全体でのCO2排出量削減が可能だ。木造はS造より軽量のため、既存構造の補強を最小限に抑えた増築工事が可能で工期の短縮も見込める。さらに、廃棄物の削減や街並みの保護にもつながるなど、景観保護の観点からも期待される開発モデルだとしている。
資材の製造から運搬、建設、修繕、解体などに伴う「エンボディドカーボン」は、CO2排出量を可視化するソフトウェア「One Click LCA」で算定する。設計段階の試算では、資材の製造から建設工事完了までの期間のCO2排出量を、英国の一般的なオフィスビルの新築と比較して約60%削減。建物全体の炭素固定量は約220トンとなる見込み。
建物の運用時に発生する「オペレーショナルカーボン」は、省エネ性能の高いエレベーターや照明などの設備、気密/断熱性の高い窓やドアの導入などで削減する。建物の稼働中のエネルギー効率を最高のAランクから最低のGランクまで分類して評価する「EPCレート」は、現在のEからB以上に向上する見込み。材料や調達、工事なども含めた環境配慮認証「BREEAM」もExcellent以上を取得予定だ。
2030年にBレベル未満の非住宅の賃貸を禁止、ロンドンではいまだ約2割
プロジェクトの開発主体は住友林業グループのBywater SFCグループと芙蓉リースの共同出資会社で、住友林業100%子会社の住友林業アセットマネジメントがプロジェクト組成に関する取りまとめや調整を行う。
英国政府は2050年までに温室効果ガス排出量をカーボンニュートラルにする目標を掲げている。オペレーショナルカーボンの排出削減に向け、既にEPCレートがFレベル以下の建物の賃貸(新規契約、更新を含む)を禁止し、2030年にはBレベルに満たない非住宅建物の賃貸を禁止する方針を掲げている。2023年時点で、Bレベル以上のオフィス物件はロンドンで2割程度。環境性能基準を満たしたオフィスの供給は不足しており、今後、環境性能の高い建物の需要拡大が予想されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 木造/木質化:世界初の“木造”人工衛星と阪神・淡路大震災級に耐える木造建築が「ウッドデザイン賞2024」奨励賞
住友林業が手掛けた木造人工衛星「LignoSat」と、阪神・淡路大震災級の地震波にも耐える高い耐震性を証明した木造10階建て実寸大実験が「ウッドデザイン賞2024」奨励賞(審査委員長賞)を受賞した。 - 脱炭素:米ボストン近郊で“純木造”の賃貸住宅に1月着工 住友林業と中央日本土地建物
住友林業と中央日本土地建物は、米ボストン近郊に米大手デベロッパーと純木造の賃貸用集合住宅4階建てと5階建ての2棟を共同開発する。着工は2025年1月、竣工は2027年5月を見込む。 - 調査レポート:主要戸建て住宅メーカー115社、3年連続増収も増収企業率は鈍化 2023年度調査
東京商工リサーチが、全国の主要戸建てメーカーとハウスビルダー115社を対象に実施した調査によると、2023年度の115社の売上高合計は8兆1214億3500万円(前年度比3.8%増)で、3年連続増収となり、初めて8兆円を超えた。利益は4728億7500万円(同17.8%増)で、過去5年間で最高水準を記録した。 - 製品動向:クラウド見積ソフト「JUCORE 見積」でプレカット部材対応の新機能 住友林業
住友林業は、建材流通事業者向けソフトウェア「JUCORE 見積」で、プレカット部材対応などの新機能の提供を開始した。人手と時間を要する業務を効率化し、人手不足の解消につなげる。 - 脱炭素:住友林業の社宅に循環型低炭素アルミ形材が採用 LIXIL
住友林業が茨城県つくば市で建設を進める木造混構造6階建ての社宅に、LIXILが開発した循環型低炭素アルミ形材が採用された。循環型低炭素アルミ形材を使用することで、新地金を100%使用したアルミ形材と比較して、CO2排出量を約8割削減できる。 - 木造化:サンケイビル初の「木造オフィスビル」が秋葉原に誕生 熊谷組と住友林業が施工
熊谷組と住友林業は、サンケイビル初となる木造と鉄骨造のハイブリッド建築「(仮称)秋葉原木造オフィスビル計画」を施工する。2025年1月中旬に着工し、2026年3月下旬の竣工を予定している。