米ボストン近郊で“純木造”の賃貸住宅に1月着工 住友林業と中央日本土地建物:脱炭素
住友林業と中央日本土地建物は、米ボストン近郊に米大手デベロッパーと純木造の賃貸用集合住宅4階建てと5階建ての2棟を共同開発する。着工は2025年1月、竣工は2027年5月を見込む。
住友林業と中央日本土地建物は2024年12月16日、米大手デベロッパーFairfield(フェアフィールド)Residential Holdingsと共同で米マサチューセッツ州ボストン近郊に純木造賃貸用集合住宅を開発すると公表した。
物件は総戸数260戸の4階建て1棟と5階建て1棟の純木造で、賃貸床面積は2万3337平方メートル。着工は2025年1月、賃貸は2026年10月に工事完了部分から順次開始し、全体完成は2027年5月を目指す。
木造建築でエンボディドカーボン削減と規格品の2×6材採用でコスト低減
建設地は町の保全地域の中にあり、静かな住宅環境に囲まれた緑豊かなエリアに位置している。各住戸からは美しい森林景観が望め、2棟の建物の間には湿地帯を生かした遊歩道が設けられている。徒歩圏内には「アッパーチャールズトレイル」と呼ばれる約21キロの自転車道があり、将来は約40キロまで延長される。自転車圏内には20万平方メートルの広大なマウンテンバイクパークもあり、自然環境の豊かさと都市生活の利便性を兼ね備えている。
利便性では、ボストン中心部やボストン・ローガン国際空港まで車で約40分、周辺の雇用地や大型スーパー、ショッピングモールまで車で約10分以内と通勤や生活にも便利なエリア。近年ボストンはバイオテクノロジーや医療関連の企業の集積が進み、今後も安定した雇用環境を見込める。そうした企業で働く社員の増加などにより、エリア内では住宅が不足し、周辺物件の賃貸状況は好調で中長期的にも住宅需要の増加が期待できる。
物件の共用部分にはコワーキングスペースやプールなど、充実した設備を整備する。構造には木造枠組壁工法を採用し、2×6材の規格品を用いることで鉄筋コンクリート(RC)造と比較してコストを低減。一般的に木造建築は鉄骨造やRC造に比べ、建てるときのCO2(エンボディドカーボン)の排出量を削減できる。木は吸収したCO2を炭素として内部に貯蔵するため、構造部材や内装など多くの木材を使う本物件も炭素を長期間固定し続けることで、脱炭素化に貢献する。
開発主体は、住友林業100%子会社のSFA MF Holdings、中央日本土地建物の100%子会社Chuo-Nittochi Iが組成したJVとFairfieldが共同出資する特別目的会社(SPC)。Fairfieldを含む参画企業とのとりまとめや調整は、住友林業100%子会社のSFCアセットマネジメントが担当する。
Fairfieldとの賃貸用集合住宅開発は、住友林業は4件目、中央日本土地建物は2件目。また、住友林業と中央日本土地建物はシアトル近郊やデンバー近郊の集合住宅開発プロジェクトで協業しており、米国で5件目の協業となる。
住友林業グループは2018年から不動産開発事業に参入し、集合住宅の2023年着工戸数は全米で9位相当となっており、米国の戸建分譲住宅に次ぐ事業の柱として拡大し、2027年までに1万戸以上の賃貸集合住宅の供給を目標に掲げている。そのため、全米有数の集合住宅デベロッパーのFairfieldを現地の優良パートナー企業と位置付け、さらなる協業で住宅事業全体の戸数を増やす狙いだ。
一方で中央日本土地建物は、海外事業のさらなる強化を目的に、事業エリア拡大を模索している中、初のボストン近郊エリアで賃貸用集合住宅開発事業への参画に至ったという。
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