建築時のCO2排出量を可視化し削減へ 建物の脱炭素化を住友林業が支援:第8回 JAPAN BUILD TOKYO
住友林業は、建築時のCO2排出量(エンボディード・カーボン)を効率的に可視化するクラウド型のLCAソフトウェア「One Click LCA」を展開し、建設セクターの脱炭素へ向けた提案を推進する。
住友林業は「第8回 JAPAN BUILD TOKYO−建築の先端技術展−」(会期:2023年12月13〜15日、東京ビッグサイト)で、建設セクターの脱炭素化に向けて、建築時のCO2排出量(エンボディード・カーボン)を効率的に可視化するクラウド型のLCAソフトウェア「One Click LCA」を紹介した。
建築時のCO2可視化、削減の取り組みが課題に
建設分野のCO2排出量で約7割を占める居住時/使用時の排出量(オペレーショナル・カーボン)は、ZEH化やZEB化、省エネ対策により削減が進みつつある。一方で、残り約3割のエンボディード・カーボンの可視化、削減の取り組みが課題となっている。
エンボディード・カーボンの算定には、資材調達から建材製造、建設、施工、修理や増改築、解体に至るまで、建物の生涯で環境影響を評価することが求められる。
住友林業が代理販売するOne Click LCAは、こうした課題に対応し、建物の基本情報と資材数量データを基にして、ライフサイクル全体のCO2を効率的に算定するソフトウェアだ。建築に使用する構造材や石膏(せっこう)ボードなどの部材と数量をインポートすると、排出原単位を掛け合わせて、建物のCO2排出レベルや、ライフサイクルステージごとの排出量の比率を可視化する。料金プランは年間で税抜き60万円(特定ユーザーのみ利用可能なライセンスの場合)から。
インポートする資材データはBIMやExcelから取り込みでき、ライフサイクルステージごとの排出量を、自動計算で算定する。ISO準拠の汎用データや環境認証ラベルEPD(製品ごとのCO2排出量データ)など約15万種類の建材/資材データに対応し、CO2排出量をより緻密に算定可能だ。さらに、輸送や施工時の実データに基づき算定することで、企業努力を削減結果に反映する。
国際規格ISO 21930や、LEED、BREEAMをはじめとする60以上の世界のグリーンビルディング認証にも適合している。
世界140か国以上で販売 日本市場向けの改良も継続
One Click LCAは世界140か国以上で導入され、11か国語に対応する。住友林業は2022年に代理店となり、日本版の販売を開始した。不動産デベロッパーやゼネコン、設計事務所で導入されているという。
今後もOne Click LCAの利便性を高めるために、日本の建築現場の実態に合わせた自動算定の条件設定や、日本市場に合致したISO準拠の原単位の整備といった改良を加えていく。
また、サプライチェーン全体のCO2排出量の把握には環境認証ラベルEPDの普及が不可欠だとして、建材メーカーに対するEPD取得推進事業も展開する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 新建材:戸田建設の環境配慮型コンクリート「スラグリート70」が「エコリーフ宣言」の認証取得
戸田建設と西松建設が開発した高炉スラグ微粉末を用いた環境配慮型コンクリート「スラグリート70」が、製品のライフサイクル全体で環境情報を定量的に開示する認証制度「エコリーフ宣言」の認証を取得した。 - カーボンニュートラル:清水建設が建設生産過程で生じるCO2排出量を自動算出するプラットフォームを共同開発
清水建設とゴーレムは、建設生産過程で生じるCO2排出量を企画設計段階でも自動算出できるCO2排出量算出プラットフォーム「SCAT」を共同開発した。 - FM:安藤ハザマ、建築物のLCAを見積書から自動計算する支援システム
安藤ハザマは、温室効果ガスなどの環境影響物質を建築工事の見積書から自動計算する仕組み、LCA支援システムを開発した。 - カーボンニュートラル:住宅建設時のCO2排出量を見える化するソフトウェアの日本版を発売、住友林業
住友林業は、住宅建設時のCO2排出量などを見える化するソフトウェア「One Click LCA」の日本語版を販売している。今後は、サプライチェーン全体でのCO2排出量の見える化を促進するために、資材メーカーと環境認証ラベル「EPD」の取得や普及に取り組んでいく。 - カーボンニュートラル:安藤ハザマが低炭素型PCa製品の標準化を実現、エコリーフ環境ラベルも取得
安藤ハザマは、安藤ハザマ興業とともに、プレキャストコンクリート(PCa)製品に低炭素コンクリートを採用した低炭素型PCa製品を標準的に供給できる体制を確立した。 - カーボンニュートラル:大成建設がCO2評価ツールを開発、建物のライフサイクルで生じるCO2排出量を算出可能
大成建設は、建築物のライフサイクルで生じるCO2の概算値を短時間で容易に算出するツール「T-LCAシミュレーターCO2」を開発した。T-LCAシミュレーターCO2は、建築物のライフサイクル「調達、施工、運用、修繕、解体」で生じるCO2排出量や削減効果を、建築物の初期計画段階からライフサイクルまでの概算値として算出することが可能で、顧客のCO2排出削減目標を意識した建設計画を支援し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する。