週休2日工事、市区町村も半数超える 猛暑日を考慮した工期設定に課題:産業動向
国土交通省と総務省は、公共工事の入札契約適正化に関する実施状況を公表した。週休2日工事の実施、ダンピング対策やスライド条項の運用について取り組みが進展する一方、猛暑日などを考慮した工期設定や、発注事務におけるICT活用については課題が残されていることが明らかになった。
国土交通省と総務省は2024年12月18日、公共工事の入札契約適正化に関する実施状況(2024年7月1日時点、工事契約実績などは2023年度実績)を公表した。週休2日工事の実施、ダンピング対策やスライド条項の運用については、取り組みが遅れていた市区町村を中心に大きく進展した。一方、猛暑日などを考慮した工期設定や、発注事務におけるASP(情報共有システム)などのICTの活用については、課題が残されていることが明らかになった。
週休2日は市区町村でも7割超に 猛暑日考慮は国や市町村で低い水準
工期の設定に当たって週休2日や祝日、年末年始、夏季休暇などの休日を考慮している団体は、国/特殊法人など/都道府県/政令指定都市で前年調査に続き100%を達成した。市区町村も72.2%(前年調査48.1%)と前回調査から大幅に増加した。
猛暑日を考慮した工期設定については、都道府県が83.0%、政令指定都市が85.0%と高水準にある一方、国は26.3%、特殊法人などは34.7%にとどまり、市区町村では14.9%だった。
現場閉所による週休2日制や、現場は閉所せず管理者と作業員の休日を確保する週休2日交替制モデルの導入は、都道府県/政令指定都市で前年度に続き100%を達成した。国は84.2%(前年度調査47.4%)、特殊法人などでは74.4%(同24%)と前年度調査から大幅に増加した。市区町村でも55.2%(同22%)と改善が進んでいることが分かった。
ASP導入は都道府県/政令指定都市で高水準 他は3割以下
発注事務におけるICTの活用について、電子契約システムの導入率は国で100%を達成したものの、都道府県で57.4%、政令指定都市で65.0%と6割程度。特殊法人などは15.7%、市区町村では14.6%と2割に満たない状況にある。
ASPについては、都道府県で100%、政令指定都市で95%と高水準にある一方、国では26.3%、特殊法人などは9.1%、市区町村では10.3%にとどまった。ただし件数ベースでみると、国の2023年度完了工事のうち、約8割超をASP導入済みの団体が発注している。
ダンピング対策では、低入札価格調査の基準価格などの算定式について、最新の中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)モデルやそれ以上の水準の独自モデルの採用が進んでいる。特に国では100%、都道府県ではほぼ全て(調査基準価格97.9%、最低制限価格100%)の団体が、最新の中央公契連モデル以上の水準を使用していた。
特定の工事材料の価格が高騰した場合に請負代金の変更を請求できる「単品スライド条項」や、物価や賃金など広範な変動に対応する「インフレスライド条項」の運用については、国と都道府県、政令指定都市で100%、特殊法人などでも98.3%に達している。市区町村でも、運用基準を策定している団体が単品スライド条項で56.5%、インフレスライド条項で54.3%と5割を超えた。
2023年度の不調/不落の発生率は、国が8.2%(前年度実績9.3%)、都道府県6.2%(同6.5%)、市区町村7.2%(同7.4%)と前年度から減少した。政令指定都市は9.4%(同8.1%)、特殊法人などは18.5%(同15.6%)と前年から増加したが、2019年実績と比較すると減少している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
デジタルファブリケーション:国産建設用3Dプリンタを3300万円で発売、Polyuse
Polyuseは、建設用3Dプリンタ「Polyuse One」の先行受注販売の予約受付を開始した。2025年4月から量産を開始し、同年夏頃に納品する予定で、販売価格は3300万円。新建材:バクテリアがコンクリを“自己治癒” NETIS最高の“VE技術”に認定
バクテリアの代謝機能を用いてコンクリートを自己治癒させる會澤高圧コンクリートの技術「Basilisk HA自己治癒コンクリート」が、NETISの最高ランクとなるVE技術に認定された。自己治癒コンクリートは、乳酸カルシウムを食べて炭酸カルシウムを排出するバクテリアの代謝機能を応用し、ひび割れにバクテリアが追随し、ひびを自動的に埋める自己治癒型のスマートマテリアルだ。「従業員エンゲージメント」を高め、建設2024年問題を乗り越える(1):建設業の2024年問題、解決の鍵は「従業員エンゲージメント」向上にあり【新連載】
建設業では高齢化や労働人口の減少に伴う人材不足で長時間労働が常態化しており、いかに労働環境を是正するかが課題となっている。しかし、やり方を間違えてしまうと、本社と現場の間に大きな溝が生まれるリスクがある。本連載では、リンクアンドモチベーションの組織人事コンサルタント山本健太氏が、建設2024年問題の解決策として、会社と従業員の間をつなぐ「エンゲージメント」の関係性を明らかにしながら、エンゲージメント向上に向けた具体的なポイントを解説していく。第6回 建設・測量生産性向上展:課題は人材不足だけではない! 立命館大 建山氏が説く「DX時代に必要な建設産業の姿」
CSPI-EXPO 2024の特別セミナーに、立命館大学 総合科学技術研究機構 教授 建山和由氏は登壇し、急激に変化する建設業界を取り巻く状況や今後求められる建設産業の在り方を示した。調査レポート:民間工事の工期設定、建設業者の3割で「要望が受け入れられた」 国交省調査
国土交通省は、2023年度の民間工事の工期設定に関する調査結果を公表した。工期の設定方法について、「協議を通して要望が受け入れられた」と回答した企業が前年度から10ポイント増加した。耐火:2時間耐久仕様の耐火集成木材「燃エンウッド」、4社と公共工事向けライセンス契約
竹中工務店は集成材メーカー4社と、公共事業向けの耐火集成木材「燃エンウッド(2時間耐火仕様)」の製造/販売ライセンス契約を締結した。