バクテリアがコンクリを“自己治癒” NETIS最高の“VE技術”に認定:新建材
バクテリアの代謝機能を用いてコンクリートを自己治癒させる會澤高圧コンクリートの技術「Basilisk HA自己治癒コンクリート」が、NETISの最高ランクとなるVE技術に認定された。自己治癒コンクリートは、乳酸カルシウムを食べて炭酸カルシウムを排出するバクテリアの代謝機能を応用し、ひび割れにバクテリアが追随し、ひびを自動的に埋める自己治癒型のスマートマテリアルだ。
會澤高圧コンクリートは2024年9月9日、バクテリアの代謝機能を用いてコンクリートを自己治癒させる技術「Basilisk HA(Healing Agent)自己治癒コンクリート(以下、Basilisk HA)」が、国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)の最高ランクとなるVE技術に認定されたと発表した。
ひび割れが発生しても自動的に治し続けるコンクリ
Basilisk HAは、生コンクリート製造時にアルカリ耐性を有する特殊培養したバクテリアを処方し、クラック(ひび割れ)が生じても自動で治し続ける自己治癒型のスマートマテリアルに転換する。
コンクリートを長寿命化し、社会インフラなどのライフサイクルコスト削減につながる。新設時の初期コストは一定程度増加するが、その後のメンテナンスがほぼ不要となるため、修復コストの大幅な削減や人による維持管理や調査が軽減され、人手不足の解消も見込める。
自己治癒のメカニズムは、バクテリアと餌の元となるポリ乳酸を混合して製造した材料を用いる。使用方法は、生コンクリート製造時に他の原材料と同時に混入し練混ぜる。Basilisk HAは練り混ぜにより、コンクリート全体に分散され、ポリ乳酸は練混ぜ水による分解で、乳酸カルシウムに変っていく。バクテリアは強アルカリ環境下で休眠状態を保っている。
硬化後のコンクリートに劣化などの原因でひび割れが発生すると、侵入してくる水や酸素によってバクテリアは乾燥状態から解放されると同時に、ひび割れ表面のpHが下がりバクテリアは活動を開始。ひび割れ内に侵入する酸素を取り込み、分裂を繰り返しながらひび割れの表面で増殖を繰り返し、バクテリアは活動を活発化させ、乳酸カルシウムと酸素を摂取しながら代謝活動により、ひび割れ内に炭酸カルシウムを排出することでひび割れを埋めていく。
ひび割れが完全に閉塞すると、水や酸素の供給が断たれることでバクテリアは再び休眠状態を保ち、次のひび割れ発生に備える仕組みだ。
仮にコンクリート1立方メートル当たり5キロのBasilisk HAを用いると、最大幅1ミリ程度までのクラックが修復可能となる。実験では、自己治癒コンクリート製の養生水槽に生じさせたクラックからの漏水を2週間ほどで止められたという。また、実現場では、供用開始後に発生したボックスカルバート頂版内側のクラックが、結露による水で自己治癒したという。
使用用途としては、特に乾燥状態ではない環境下のコンクリート全般に利用できるが、水関係の構造物や地下建築物、トンネルなど維持管理が難しい構造物のひび割れ修復に本領を発揮する。ひび割れ発生初期の段階で自己修復するため、内部の鉄筋保護に大きな効果がある。
今回認定されたNETISは、新技術に関わる情報の共有や提供に向けて、国土交通省が運用しているデータベースシステムだ。施工者がNETISに登録された技術を用いると、国や地方自治体が発注する公共工事において、総合評価落札方式や工事成績評定での加点対象となる。
NETISには、A評価とVE評価があり、A評価は技術の効果や性能を示す初期段階にあたる。施工者がA評価の技術を用いた場合、使用後の評価を示す「活用効果調査票」の提出が義務付けられる。
VE評価は調査表の内容が既に評価されているため、施工者に提出義務が課されない。今回の技術は、2022年に登録された後、排水路工事や道路改良工事など合計16件の工事で採用。活用効果調査表のほとんどで「従来技術より優れる」「今後もぜひ活用したい」といった評価を受け、今回のVE評価獲得に至った(NETIS番号:HK-220003-VE)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 現場管理:「残コン問題」をスマホのARアプリで解消する「キャパシル」 トライアローが無料版提供
コンクリートの製造や輸送のコスト上昇で、無駄が生じる「残コン」や「戻りコン」が問題視される中、トライアローは現場で生コン量をスマホやタブレットで測れるARアプリを無料で提供している。 - 施工:環境配慮型コンクリを使用した人工石材「さすたまぶる」開発、三井住友建設
三井住友建設は、セメント不使用の環境配慮型コンクリート「サスティンクリート」を用いた人工石材「さすたまぶる」を開発した。多彩な色や模様を表現可能で、型に流して固めることで複雑な形状にも対応する。自社R&Dセンターにさすたまぶるの床材を試験施工し、歩行時の安全性を確認した。 - 脱炭素:環境配慮型セメントとリサイクル骨材を使用した「サーキュラーコンクリート」を開発へ、竹中工務店や鹿島建設など
竹中工務店と鹿島建設など8社は、CO2排出量を削減した環境配慮型セメントと、解体時に発生するコンクリート廃材から製造した再生骨材や戻りコンクリートから取り出す回収骨材(リサイクル骨材)を使用した「サーキュラーコンクリート」の開発に着手した。リサイクル骨材をコンクリートに再利用する水平リサイクルの実現を目指す他、コンクリ製造のサプライチェーンを都市部で完結させることで、運搬に伴うCO2排出量の削減を図る。 - 脱炭素:環境配慮コンクリと3Dプリンティング技術を融合、高機能柱部材を開発 大成建設
大成建設は、CO2排出量収支マイナスの環境配慮コンクリートと3Dプリンティング技術を融合した高機能な柱部材を開発した。埼玉県幸手市で建設中の「大成建設グループ次世代技術研究所」のエントランス柱として、実工事に初適用した。 - 製品動向:コンクリ打設時の床スラブ厚さを1人で測定、竹中工務店とレンタルのニッケンが開発
レンタルのニッケンと竹中工務店は、作業者1人でコンクリート打設時の床スラブ厚さを計測できる測定器を共同開発した。 - 製品動向:木造ハイブリッド構造の奥村組社員寮に環境配慮型コンクリを採用
奥村組は2024年8月19日、埼玉県川口市で建設を進める木造ハイブリッド構造の自社寮「奥村組西川口寮」の基礎と地中梁に、環境配慮型BFコンクリート「CELBIC」を採用した。