人工衛星を街づくりに活用 三菱地所設計が開発余地を3D化した「容積充足率マップ」公開:GIS
三菱地所設計とRESTECは、人工衛星のセンサーで地表を観測したデータをもとに、現況建物の容積率が指定容積率に対して何%かを可視化する「容積充足率マップ」を公開した。
三菱地所設計とリモート・センシング技術センター(RESTEC)は、2020年度から衛星リモートセンシング技術を活用した街づくりの研究を重ねてきた。その研究成果の第1弾として2024年10月から、衛星リモートセンシング技術を用いた「容積充足率マップ」を東京都心の山手線周辺を対象に試験公開している。
容積充足率(現況建物の容積率/指定容積率)を広範囲に推定
衛星リモートセンシングは、人工衛星に搭載したセンサーで遠隔(リモート)から地球を観測(センシング)する技術。地球上の都市、海、森、雲などが放射または反射する電磁波を人工衛星に搭載したセンサーで観測し、地表面のさまざまな空間情報を高精度に取得する。土地被覆や地表面温度、標高などのデータを取得できるため、都市計画などへの応用展開が期待されている。
これまで街づくりDXに取り組む三菱地所設計と、リモートセンシングの先端技術を有するRESTECは、衛星リモートセンシングを用いたデータ駆動型の新たな街づくりのあり方として、公共空間の利活用を含む将来の街づくりの可能性を模索してきた。
今回、研究成果の第一弾で公開した容積充足率マップは、土地活用や街づくりの基礎資料となる広範囲にわたる既存建物の容積率を可視化する。衛星で取得した容積率のデータを活用し、開発用地の調査からエリアマネジメントまでの一貫したコンサルティングを提供する。
容積計算は、RESTECとNTTデータが共同開発した「AW3Dデータ」を用いている。地表部の建物などを3D化しており、都市部で最高0.5メートルの解像度を持つ。高精度の3D地図をもとに指定容積率のデータと重ね、既存建物の容積率を推定。用途地域で定められている指定容積率のうち、現況建物の容積率が何%なのかが3Dで把握可能になり、今後の開発で床面積を広げられる開発余地が分かる。
三菱地所設計とRESTECは、今後も人工衛星データを活用し、容積率に関する情報に限らず建物や都市に関する多様な情報を可視化し、街づくりに生かすことができるデータプラットフォームの開発を目指す。データプラットフォームは開発事業用地の調査、行政による都市計画検討や建設コンサルタントが作成するマスタープランの基礎資料となるように整備していく。
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