シリコンスタジオがゲームエンジンで実現する“建設3Dデジタルツイン”の可能性:なぜ建設DXにゲームエンジンが必要か?
建設業界ではBIMや点群などのデジタルツイン活用が加速している。しかし、AIやxRを含めて建設DXと言えるほど3Dデータを有効活用できている建設会社はどれほどあるだろうか? 活用のカギはゲームエンジンにある。
シリコンスタジオの向井亨光氏は、2024年9月17日に開催したBUILT主催の「建設DXセミナー2024夏〜設計・現場・バックオフィスの業務改善を考える〜」で「建設DXを加速させる3Dデジタルツイン活用」をテーマに講演した。
本稿では、セミナーレポートとしてゲームエンジンをコア技術とするシリコンスタジオの強みと3Dデジタルツインの可能性について解説する。
3Dデジタルツインで何ができるか?
3DCGの黎明期からゲームやエンタメの分野でグラフィックス制作やサーバのネットワーク構築、アプリケーション開発などを手掛けてきたシリコンスタジオは、建築・土木分野でもゲームエンジンの技術を応用した「3Dデジタルツイン」でさまざまな課題解決をサポートしている。
3Dデジタルツインとは、実在の物体や空間を3Dモデル化して仮想空間に再現する技術だ。現実空間を3Dレーザースキャナーによる点群データやBIM/CIMモデル、地図情報などを組み合わせて3Dデータ化するため、リアルなシミュレーションが可能になる。向井氏は「美麗な建築3DCG制作、システム開発、サーバなどのインフラ構築、AIによる学習/検証環境など、企画/導入コンサルからサポートまで一気通貫でできるのが当社の強み。ユーザーの要望をかなえる3Dデジタルツインを提供できる」と自信を示す。
3Dデジタルツインに必須なのが、「Unity」や「Unreal Engine」に代表されるゲームエンジンだ。「建設で3Dと言えばBIMだ」と思う人がいるかもしれないが、BIMソフトウェアは既存の機能に縛られてしまい、ここ数年で爆発的な広がりを見せるAIや点群の活用などには向かない。ゲームエンジンであれば低コストで、3Dデータ単体では難しかった新たな領域にもさまざまなデータを連携させる道が拓(ひら)ける。
ユースケースとしては、現場を3DCGで仮想空間に再現して設計BIMと現場の進捗(しんちょく)状況を重ねた施工管理システム、遠隔でのリアルタイム立ち合いや人が立ち入れない場所のVR検査、時間や天候の変化を表現できる都市計画のビジュアライゼーションによる意思決定や合意形成などがある。建機の位置情報や作業量をリアルタイムで3D化して可視化したり、車両の動きを3Dで制作してAIの教師データに用い自動運転を実現したりする試みも始まっている。災害対応でも、被災地の画像や点群データを基に3Dモデル化したり防災シミュレーションに利用したりしている。
BIMと点群、クラウドで遠隔の施工管理を実現した村本建設
村本建設はBIMモデルと点群データを重畳させ、遠隔で現場の進捗管理ができる機能をUnityで開発して短期間で構築した。クラウドを介しているので、多拠点または多人数でノートPCやタブレット、VRなどさまざまなデバイスによってストレスなく同時確認しながら作業状況を共有できる。
あいおいニッセイ同和損害保険は、国土交通省が主導する「Project PLATEAU(プラトー)」の都市データに3Dオブジェクトを重ね、渋谷の3D浸水ハザードマップを作成した。車を水没させるほどの水害が起きたらどの程度の被害規模になるのかが視覚的に分かる。「当社独自のテクスチャー技術で建物情報が無い部分は補完し、データ加工により高速化も実現。PLATEAUのデータには含まれない河川の情報はGIS情報を活用して表現した」と向井氏は説明する。
設備点検では、シリコンスタジオによる受託開発で東芝デジタルソリューションズが自社のAR技術を組み合わせた機器操作マニュアルアプリケーションを実用化。操作したい設備機器をタブレットで撮影すると、画面に操作手順のガイダンスのCGを表示するという仕組みだ。「技術伝承に悩む建設業界でも、新人教育の用途で需要が高まるのではないか」と向井氏は期待を寄せる。
ゲームエンジンが担う建設DXの可能性
3DCG制作のみならず、システム構築やAIの学習や検証にも対応できるのがゲームエンジンをコア技術とするシリコンスタジオの優位性だ。本セミナーで取り上げた事例はあくまで一例に過ぎない。各社がまだ活用し切れていないBIMや点群データなどを3Dデジタルツインとして利活用できれば、既存の建設プロセスを変革するだけでなく、AI活用や担い手の育成、本当の意味でDXと言える新規事業の創出が実現するかもしれない。
向井氏は「『BIM/CIMデータや点群データを作成したが使い道が分からない』と、漠然とした相談に来られる建設会社も多い。そうした会社をサポートして、各社の課題解決につながりデータの新しい価値を見いだせる3Dデジタルツインを開発していきたい」と展望を語った。
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提供:シリコンスタジオ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2024年10月8日