地盤沈下と液状化のリアルタイム被害予測システムを開発、芝浦工大:レジリエンス
芝浦工業大学の研究チームが、地盤沈下や液状化のリアルタイム被害予測システムを開発した。土地の地盤強度を予測することで、構造物の建設に最適なエリアの特定が可能となり、地震発生時の構造物倒壊のリスク抑制にもつながる。
芝浦工業大学 工学部 地盤工学研究室 教授 稲積真哉氏らの研究チームは、地盤沈下と液状化のリアルタイム被害予測システムを開発したと2024年7月に発表した。
研究チームは、土の密度や基礎に必要な条件を評価する標準貫入試験※1やミニラムサウンディング試験※2を用い、東京都世田谷区内の433地点にある地盤データを収集。統計手法のクリギング法を用いて、緯経度や標高などの地理的座標に基づく支持層の深度や厚さを予測した。
※1 標準貫入試験:地盤を打撃することで強度を調べる試験。ボーリング調査の一種で、地盤の硬さや軟らかさの他、試料の採取、地盤の締まり具合などが判断できる
※2 ミニラムサウンディング試験:土中に金属棒を差し込み、その抵抗力を測定する動的貫入試験
その結果、世田谷区の広範囲にわたる支持層の分布を示した3次元マップ作成に成功した。複数のモデルから予測結果を組み合わせる「バギング法」※3を採用し、標高などの地理的データを含めて予測精度を向上させた。
※3 バギング法:複数のモデルからの予測結果を組み合わせて、より精度の高い結果を得る「アンサンブル学習法」のうちの1つ。モデルを並列に組み合わせて、多数決をとる手法
3Dマップにより、安定した基礎の上に構造物が建設されているかどうかが判断可能となり、地盤変動が生じた際の倒壊リスクを最小限に抑えられる。
また、3Dマップは、地中の水分や地盤の動きなどのパラメーターを監視するセンサーから得られるリアルタイムデータと統合し、土壌変化の継続的なモニタリングが可能になる。土壌の潜在的リスクを特定することで、インフラや開発用地、公共施設の設計、配置を最適化できる。
地盤変動の影響を受けやすい土地の調査は、これまで特定の地域における限られたサンプリングにとどまっていた。今回の広範囲を対象にした3Dマップは、国や自治体による新たな都市計画の考案、建設業者による事前のリスク評価などに寄与する。
また、国や自治体が新たな都市計画を考える際、建設業者が事前のリスク評価を行うときに役立ち、将来は個人が携帯電話などでリアルタイムに地理データや警報を確認できるシステムへの活用にも期待されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Japan Drone 2024:災害時に必要なのは“情報収集力” 1000km飛行のVTOLドローンを開発したテラ・ラボの「災害対策DX」
気候変動や脆弱な都市インフラを背景に、世界規模で自然災害による被害が拡大している。日本では国土強靱化基本法を制定し、国や地方自治体で防災/減災の対策が講じられている。テラ・ラボはこうした状況を踏まえ、「広域災害情報支援システム」の構築を目指すベンチャー企業だ。 - 遠隔臨場:行政の災害対応向けに遠隔支援ツール「SynQ Remote」提供 リモートで避難指示や防災訓練
クアンドは、全国で多発する線状降水帯や台風などを受け、行政機関が災害対応で抱える悩みを解決すべく、自治体向けに遠隔コミュニケーションツール「SynQ Remote」の提供を開始した。 - 第6回 建設・測量生産性向上展:課題は人材不足だけではない! 立命館大 建山氏が説く「DX時代に必要な建設産業の姿」
CSPI-EXPO 2024の特別セミナーに、立命館大学 総合科学技術研究機構 教授 建山和由氏は登壇し、急激に変化する建設業界を取り巻く状況や今後求められる建設産業の在り方を示した。 - BCP:地震時の計測データから建物の挙動を自動推定、リスク評価の精度向上へ 西松建設が開発
西松建設は、地震時の計測データから建物の挙動再現解析モデルを自動推定する新たな構造ヘルスモニタリングシステムを開発し、東京都港区の自社事務所ビルで運用を開始した。 - 工業化建築:能登半島地震の復旧で、東急建設がユニット住宅20棟を3カ月で設置
東急建設は、能登半島地震の復興支援者用宿舎として、工場で製造して10トントラックで運べる木造住宅を石川県輪島市の能登空港多目的広場に設置した。 - リノベ:マンションの建て替え価値をWebマップで見える化 東京・赤坂限定で先行リリース
スマート修繕は、マンションの「建替バリュー」がマップ上で分かる無料のサービス「スマート建替」を2024年秋にも提供開始する。建て替え、耐震補強工事、修繕工事などの工事支援サービスも含む、包括的なバックアップで、老朽化マンションの維持再生に貢献していく。