3Dプリンタとロボット打設技術でコンクリ構造物の自動化施工システムを開発、大林組:3Dプリンタ
大林組は、3Dプリンタやセメント系材料を使用した外殻製造技術と、コンクリートの吹き付けあるいは流し込みをロボットにより行う技術を使用することで、「コンクリート構造物の自動化施工システム」を開発した。今回の技術を適用し、日本ヒュームとプレキャストコンクリートブロックの製造も成功した。
大林組は、3Dプリンタやセメント系材料を活用した外殻製造技術と、コンクリートの吹き付けあるいは流し込みをロボットにより行う技術を使用することで、「コンクリート構造物の自動化施工システム」を開発したことを2022年7月12日に発表した。
型枠費を最大で50%削減
これまでコンクリート構造物の製造では、型枠の組み立てと解体やコンクリートの打設などで多くの人手が必要だった。一方、大型のプレキャストコンクリート製品は、鋼製型枠が特注生産となるため、設計から納品までの期間が約10カ月と長いだけでなく、製造コストが高くなることが課題だった。
そこで、大林組は、3Dプリンタとセメント系材料を使用してプレキャストコンクリートの外殻をプリントし、コンクリートの打設経路をプログラミングしたロボットアームで、コンクリートを吹き付けあるいは流し込むことにより施工の自動化を実現するコンクリート構造物の自動化施工システムを開発した。
コンクリート構造物の自動化施工システムは、3Dプリンタで外殻をプリントすることで、型枠の組み立て作業や打ち込み後の解体作業が不要となる他、数人の作業員で行っていたコンクリート打設をロボットアームが自動で行うことで、従来と比較して労力を3分の1にできる。
さらに、3Dプリンタ製の外殻は、鋼製型枠より短期間で製造可能なだけでなく、次の製作に型枠を転用するまでの待ち時間が発生しないため、プレキャストコンクリートの製造工程を減らせる。とくに、特注の鋼製型枠で複数のプレキャストブロックを製造しなければならないプレキャストケーソン基礎工事では、ブロックの製造工程がこれまでの約10カ月間から約2カ月間に短縮する。
加えて、外殻のプリントやコンクリートの打ち込みをロボットアームが自動で行い、24時間体制の製造を達成し、製造工程の削減に役立つ。使用する3Dプリンタは、設計図からダイレクトにロボットの制御情報を生成するため、複雑な型枠や多品種の型枠が必須な構造物を構築する。
3Dプリンタでプリントした外殻は、コンクリートと一体化しており、従来手法で製造したプレキャストコンクリートと同等の強度を備え、3Dプリンタの費用や人件費などを含んで比較した場合でも、鋼製型枠より安価に作れ、型枠費を最大で50%減らせる。
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