既存躯体を活用し減築と増築で改修、大阪避雷針工業神戸営業所が竣工 竹中工務店:脱炭素
既存躯体を活用し、減築と増築を同時に行って竹中工務店が改修した兵庫県神戸市の「大阪避雷針工業神戸営業所」が竣工した。同規模の建物を新築した場合と比較して、建設時のCO2排出量を約70%削減した。
竹中工務店は2024年10月10日、既存躯体を活用し、減築と増築を同時に行って改修した「大阪避雷針工業神戸営業所」が、兵庫県神戸市で竣工したと発表した。
改修した建物は、地上2階建て(改修前地上4階建て)で、敷地面積は660.87平方メートル、延べ床面積は471.59平方メートル(改修前857.86平方メートル)。既存建物の構造はRC造、増築部分はS造と木造。
増築部の構造部材には木材を積極的に活用した他、CO2排出量の少ない電炉鋼材や環境配慮型コンクリート「ECMコンクリート」などを採用し、同規模の建物を新築した場合と比較して、建設時のCO2排出量を約70%削減した。外装高断熱化などの省エネ改修を行ったことで、外皮性能は竹中工務店の評価でBEI0.40、CASBEEはSランク相当となった。
1989年に建てられた大阪避雷針工業神戸営業所では、当初新築による建て替えを計画していた。しかし築35年の既存躯体を調査した結果、構造体は健全で外装タイルの劣化も軽微で、今後70年以上の耐用年数が見込めることが分かった。そこで、躯体を生かし、必要な部分には増築を、改修後に使用しない部分には減築を実施。増築部に対する減築部の位置と重量を緻密に調整することで、既存躯体への不要な耐震補強や新規の基礎工事を行わずに増築を行った。
増築部の構造部材は、ボルトやビスを露出させるなど将来取り外し可能な方法で取り付け、補修や交換、解体にも配慮した。新築する場合と比べて、工期の短縮や解体時の騒音/振動を抑制でき、周辺地域への影響も低減できる。
また、改修に当たって伐採したクスノキを、神戸市で木材有効活用事業に取り組むSHARE WOODSと協業してテーブルや手すりに、また、加工時に発生したおがくずも3Dプリンタを使用して植栽プランターに再生した。改修前に使用していた照明器具や家具などもリメークして利用している。なお、搬送時に生じるCO2の削減を考慮して、加工は近隣の工場で行った。
竹中工務店は、建築物の設計・施工段階において、リユース/リサイクル建材の選択や、解体を考慮した設計手法検討などへとつなげる考え方と実践に関する取り組みとして「サーキュラーデザインビルド」を提唱している。今回の改修は、サーキュラーデザインビルドのコンセプトを体現した初のプロジェクトとなる。
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