「残コン問題」をスマホのARアプリで解消する「キャパシル」 トライアローが無料版提供:現場管理
コンクリートの製造や輸送のコスト上昇で、無駄が生じる「残コン」や「戻りコン」が問題視される中、トライアローは現場で生コン量をスマホやタブレットで測れるARアプリを無料で提供している。
ITや通信、建築・土木、プラントなどの人材サービス会社のトライアローは、型枠内の必要な生コンリートの量を測れるAR空間測量アプリ「キャパシル」を開発し、現在はApp Storeで無料版を公開している。
利用する現場に合わせて2つのモードを切り替え
生コンクリートは数時間で固まってしまう性質上、不足した場合に後から追加で打設すると状況によっては「コールドジョイント」と呼ばれる打ち重ねた部分に不連続な面が生じ、強度に問題が発生したり、仕上がりに大きな支障が出てしまうなどの問題が発生する。そのため、不足が発生しないように生コンクリートを余剰に発注した結果、廃棄が大量に発生する「残コン問題」が以前より問題視されてきた。昨今は環境問題への意識の高まりや生コンの製造コストと輸送コストの上昇もあり、残コン問題の解決は喫緊の課題とされている。
一方、労働人口の減少で建設業界でも人手不足が深刻化しており、こうした環境下では発注のたびに人手をかけて正確に計測することも困難になる。こうした課題を解決すべく、トライアローはスマートフォンやタブレットによる撮影とタップ操作のみで完結するキャパシルを開発した。
キャパシルの使用方法は、基本操作の「ピクチャーモード」は、アプリをインストールしたスマホで現場を撮影し、打設範囲の外周にヴァーチャルのピンを配置。後は高さを設定すればコンクリの体積が見積もれる。図面をもとに現場の情報を入力するなどの事前準備は必要ない。
複雑な形状の現場や画角に測定範囲が納まらない場合は、カメラを起動させて測定したいエリアを映しながら、画面をタップしてピンを配置していく「アラウンドモード」を使う。スマホカメラを動かし、位置を微調整しながらでもピンを立てることで、広範囲の計測にも対応する。
計測結果は履歴としていつでも確認可能で、広範囲の現場でも複数エリアを数回測定してコンクリ打設量を合算して算出できる。アプリインストール後はオフライン時でも測量可能で、電波の届きづらい現場での測量にも問題なく使える。
トライアローは現在、キャパシルを無償版限定で提供している。今後は、建設業界の幅広い業務課題の解決に資するアイデアや要望を募り、上位のエンタープライズ版を開発していくとしている。
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