環境配慮コンクリと3Dプリンティング技術を融合、高機能柱部材を開発 大成建設:脱炭素
大成建設は、CO2排出量収支マイナスの環境配慮コンクリートと3Dプリンティング技術を融合した高機能な柱部材を開発した。埼玉県幸手市で建設中の「大成建設グループ次世代技術研究所」のエントランス柱として、実工事に初適用した。
大成建設は2024年8月22日、CO2排出量収支マイナスを実現した環境配慮コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」と、3Dプリンティング技術「T-3DP(Taisei-3D Printing)」のノウハウを融合し、高機能な柱部材を開発したと発表した。
製作した部材は、内側から光と空調を透過させ、桜の樹皮を模した独創的なデザインを表現している。埼玉県幸手市で現在建設中の「大成建設グループ次世代技術研究所」の研究管理棟(ゼロカーボンビル)のエントランス柱として、実工事に初適用した。
CO2排出量最大106%減、施工合理化で工期を短縮
大成建設が開発した環境配慮コンクリートは、排気ガスから回収したCO2をコンクリート内部に固定することで、一般的なコンクリートと比べてCO2排出量を最大106%削減する。
通常の柱の施工では、型枠にコンクリートを打込む際に生じる側圧に耐えられるよう型枠を外側から補強する支保工を設置する。これに対し、今回の工法は、3Dプリンティングで製作した部材自体の強さと部材内部に埋め込んだ補強材により、側圧に耐えられるよう部材設計を合理化したことで、外側の支保工を不要とした。実働1日以内(作業員3人)で現地施工が完了し、従来と比べて次工程への受け渡しまでの日数が8日短縮する。
柱部材製作にあたっては、3Dプリンティングで形成する凹凸模様の形状特性を独自アルゴリズムで最適化することで、独特なテクスチャーを実現した。また、コンピュテーショナルデザインを活用し、意匠や機能などの多様なニーズに対応する最適なデザインを選定している。
同社は今後、環境に配慮した3Dプリンティング建材の設計/施工におけるバリエーション拡大と実用化を進め、CO2排出量のさらなる削減と生産性向上を図る。
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