建物の「風騒音」発生リスクを3Dモデル上で可視化、風況AI技術で簡易測定も:スマート化
大成建設は、強風時の建物外壁面の風騒音発生リスクを可視化する「TSounds-Wind」を開発した。風騒音に関する実験データと、建物周辺の風況シミュレーションデータを連携させて、外壁面で風騒音が発生するリスクがある部位や騒音レベルを高精度に予測し、3Dモデル上で可視化する。
大成建設は2024年7月31日、強風時における建物外壁面の風騒音発生リスクを可視化する技術「TSounds-Wind」を開発したと発表した。外装付属部材から生じる風騒音の風洞実験データと、建物周辺の風況シミュレーションデータを連携させて、騒音リスクを高精度に予測する。
予測結果は、騒音の大小を5段階評価で3Dモデル上に色分けして表示する。風騒音が発生するリスクがある部位と騒音レベルを分かりやすく可視化することで、対策が必要な領域の特定が容易になり、建物外装計画の最適化につながる。
大成建設は今後、風騒音評価が必要な全ての建物を対象に、TSounds-Windを積極的に適用していく。風騒音に配慮した部材の選定など、外装計画の最適化により、建築計画に関するリスク低減に取り組む。
「風況AI技術」を活用、2〜3日程度での簡易測定が可能に
建物に特定の風速や風向きから強風が当たると、建物外壁面に設置されたベランダ手すりやルーバーなどの部材から風騒音が発生する可能性がある。騒音が一定レベルを超えると、住環境障害につながるリスクが生じる。
風騒音の予測と評価はこれまで、実際の部材にさまざまな風速や風向きで風を当てる風洞実験の測定結果をもとに行ってきた。しかし、風騒音が発生する部材でも発音条件に合致するケースは限定的である一方、実際の建物周辺の風の流れは複雑で、設置後の部材に作用する風況が実験結果と合致するかの判断は容易ではない。このため、建物全体としての風騒音発生リスクを推定することは困難だった。
TSounds-Windは、風騒音が問題になる領域をスピーディーに特定し、3Dモデル上で可視化する。部材仕様の変更や対象範囲の絞り込みなどから、より効果的な騒音対策の検討が可能になり、騒音低減のための技術コストを抑制できる。
また、コストや要求精度などの設定条件に応じて、風騒音発生リスクの予測結果を2〜3日程度で出力できる「簡易予測」と、1カ月程度かけて精緻な評価を行う「高精度予測」を用意した。
簡易予測は計画初期段階での検討に有効で、予測には「風況AI技術」を採用している。風況AI技術は、大成建設がこれまでの研究開発成果として蓄積した200種2万データ超の部材の風騒音データベースや、延べ80平方キロメートル相当の市街地に対する風シミュレーション画像を学習データとして構築した。
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