残コンにCO2を固定化した合成炭酸カルシウム、土木建設材料に適用できるか 出光興産が適用試験:スマートコンストラクション
出光興産と日本コンクリート工業、灰孝小野田レミコンは共同で、コンクリートスラッジを利用して排ガス中のCO2を固定化した合成炭酸カルシウムの土木建設材料への適用に向けた試験を開始する。
出光興産は2024年8月20日、日本コンクリート工業、灰孝小野田レミコンと共同で、コンクリートスラッジを利用して排ガス中のCO2を固定化した合成炭酸カルシウム(合成炭カル)の土木建設材料への適用試験を開始すると発表した。3社は2026年度までに、合成炭カルを使用したコンクリートや地盤改良材の社会実装を目指す。
試験では、合成炭カルがコンクリートに使用可能かどうかを確認するための適用試験を行う。また、生コンクリートでの使用可能性を評価するためハンドリング性試験と、地盤改良材への適用検証も実施する。実施期間は2024年7月から2025年3月まで。
コンクリートスラッジは、パイルなどのコンクリート製品製造最終段階で発生する 「残コン」と呼ばれる残余物。主成分はセメントと水だ。
出光興産と日本コンクリート工業はこれまでも、産業廃棄物に含まれるカルシウムとボイラーなどの排ガス中のCO2を反応させて合成炭カルを製造する技術の開発と、事業化に向けた取り組みを推進してきた。2023年度には、日本コンクリート工業の子会社であるNC西日本パイル製造の滋賀工場に建設したパイロットプラントで、合成炭カル製造の実証試験を実施している。
今回は新たに灰孝小野田レミコンが参加し、より実用的な実証を行う。灰孝小野田レミコンは、自社が製造販売する生コンクリートと、検討中の地盤改良材に合成炭カルを利用する。出光興産は、パイロットプラントでの製造補助を担当し、合成炭カルの品質確認として、水分や化学組成などのサンプル分析を行う。日本コンクリート工業は、パイロットプラントを動作させ、コンクリートスラッジからできた合成炭カルをフィルタープレスし、パッキングした後、灰孝大津工場向けに輸送する。
今回の試験は、滋賀県の「令和6(2024)年度滋賀県近未来技術等社会実装推進事業補助金事業」に採択された。
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