清水建設の環境配慮型コンクリ、「カーボンネガティブ」達成を第三者機関が確認:脱炭素
清水建設が千葉県印西市の新築工事現場に適用した環境配慮型コンクリートについて、第三者機関の検証により、カーボンネガティブを達成したことが確認された。
清水建設は2024年5月22日、千葉県印西市の「グッドマンビジネスパーク ステージ6ビルディング2新築工事」に適用した環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」のCO2削減効果について、第三者機関による検証の結果、コンクリートへのCO2固定量が排出量を上回る「カーボンネガティブ」の達成が確認されたと発表した。
CO2総排出量は77トン、バイオ炭中のCO2固定量は79.3トンと算出
SUSMICS-Cは、木質バイオマスを炭化した「バイオ炭」を混ぜ合わせることで、木が成長過程で吸収したCO2を難分解性の炭素としてコンクリートに吸収/固定する。コンクリート練混ぜ時にバイオ炭を投入するだけで製造できる汎用性の高さが特徴で、既存の生コンプラントをそのまま利用して製造でき、通常のコンクリートと同様にポンプ圧送による打ち込みも可能だ。
今回の新築工事では、1キロ当たり実質2.3キロのCO2を固定化するバイオ炭を、1立方メートル当たり60キロ混和した配合を採用。510立方メートル打設した。
CO2排出量収支の算定方法は、バイオ炭の製造や輸送などに起因する追加的な要素を勘案してCO2排出量を定量化する清水建設独自の方法論に基づくもので、第三者機関のソコテック・サーティフィケーション・ジャパンにより妥当性が認められている。算定の結果、CO2の総排出量は77.0トン、コンクリートに混入したバイオ炭中のCO2固定量は79.3トンとなり、実態に即した実績値に基づきカーボンネガティブを達成したことを確認した。
建設工事の発注者は今後、SUSMICS-Cを活用することで、サプライチェーンCO2排出量のうちスコープ3(自社以外からの排出量)の削減実績を、信頼性の高い環境価値として社会に訴求できるようになる。
アスファルト合材や改良対象土などでも、CO2排出量削減を強化
清水建設では、バイオ炭を活用した環境配慮型施工技術を「SUSMICS-C(Sustainable+SMI=炭+Carbon Storage+Concrete)」と総称し、シリーズ化している。
今後は、SUSMICS-Cに加え、アスファルト合材の混合材料としてバイオ炭を利用し製造過程で生じるCO2排出量を実質ゼロにする「SUSMICS-A」、改良対象土に溶融スラグとバイオ炭を混入することで施工に起因するCO2排出量を実質ゼロにする地盤改良工法「SUSMICS-G」などを現場のニーズに合わせて展開する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- デジタルファブリケーション:3DプリンティングとCO2固定化コンクリで、環境負荷低減の“友禅流し”ベンチ製作 金沢工大と鹿島建設
金沢工大と鹿島建設は、CO2で固まるコンクリートを素材に用い、3Dプリンティングで公園のベンチを製作した。今回の産学連携の取り組みで、設計から製造に至るプロセスのデジタル化と、景観に馴染む意匠を表現するための複雑な形状の実現を実証。さらに、3DプリンティングとCO2-SUICOMの融合で、セメント系造形物として、カーボンネガティブとなる3Dプリンティング製作を達成した。 - 脱炭素:CO2吸収コンクリートに2つのグレードを設定、大型PCa製品を開発 鹿島建設
鹿島建設は、製造過程で排出されるCO2が実質ゼロ以下のカーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM」に、2種類のグレードを設定した。従来のカーボンネガティブ型に加えて、カーボン低減型を新たに設定し、大型のプレキャストコンクリート製品の製造に活用している。 - 新建材:大林組がカーボンネガティブの注入材を開発、トンネル補修工事のCO2削減
大林組は、トンネル覆工裏込め注入技術「スペースパック工法」で使用する可塑性注入材について、製造時のCO2排出量を最大130%削減するカーボンネガティブタイプを開発した。従来と同じ性能や施工性を維持しながら、インフラ補修を低炭素化する。 - 新建材:バイオ炭でカーボンネガティブを実現、脱炭素アスファルト舗装の共同開発に着手
清水建設と日本道路は、CO2固定効果のある森林資源由来のバイオ炭を用い、アスファルト合材に炭素を貯留する脱炭素アスファルト舗装技術の共同開発に着手した。カーボンニュートラル、さらには、カーボンネガティブを実現するアスファルト舗装材の実用化を目指す。 - 導入事例:鹿島建設が「理論の学習」×「実務の体験」の研修施設「鹿島テクニカルセンター」を開設
鹿島建設は、「FEEL&THINK」をメインコンセプトに掲げ、社員が五感で感じ考える研修施設「鹿島テクニカルセンター」を開設した。 - 施工:施工に起因するCO2排出量を実質ゼロにする「脱炭素型地盤改良工法」を開発、清水建設と東洋スタビ
清水建設は東洋スタビと共同で、改良対象地盤に溶融スラグとバイオ炭を混入することで、施工に起因するCO2排出量を実質ゼロにする脱炭素型地盤改良工法を開発した。今後は、新工法の地盤改良工事への適用を促進し、カーボンニュートラル社会の実現に寄与する考えだ。