高層マンション内でエレベーターよりも早いドローンの“垂直配送”、東大と三井不:ドローン
東京大学と三井不動産の共同研究グループは、高層マンションなどでドローンを用いた配送システムを考案した。一定の需要レベルまでは、ドローンを用いた方がエレベーターよりも省電力で早く配送できることが判明した。
東京大学 先端科学技術研究センターと三井不動産は2024年5月22日、高層マンションなどの建物内でドローンを用いる配送システムの有効性を数理モデルで解明したと発表した。
両者の研究グループは、東京大学 先端科学技術研究センター 特任講師 江崎貴裕氏、特任研究員 井村直人氏、教授 西成活裕氏と、三井不動産 藤塚和弘氏がメンバーとして参加した。
ドローン配送の有効性を数理モデルで解明
ドローン配送システムは、垂直飛行可能なドローン専用空間を建物内に構築し、各階に設けた垂直離着陸可能なポートで荷物を配送する。上下飛行や荷物の脱着、バッテリー交換といった配送プロセスを想定し、現実に近い数理モデルを構築した。ドローン機体は、国産のACSL製「PF2-AE Delivery」の仕様をもとにしている。
シミュレーションでは前提として、高層マンションの各家庭で、時間や空間内で無作為に発生するイベントをモデル化する「ポワソン過程」によってニーズが生じると想定。さまざまなドローンの台数に対する配送のパフォーマンスを調べた。サービスを行う際に待ち時間や発生する行列の長さについて分析する「待ち行列理論」に基づいた数理学的な解析で、必要なドローンの台数などを算出した。確率的な現象をシミュレートする方法論「モンテカルロ・シミュレーション」で一定の需要レベルまでは、ドローンを用いた方がエレベーターよりも、消費電力、待ち時間ともに有利になる条件を導き出した。
大量輸送が可能なエレベーター配送と個別の即時対応が可能なドローンを組み合わせることで、さまざまな輸送手段を用いた物流システムの実用化につながることが期待される。
今回の研究では、基礎的なモデリングによる概念実証を実施したが、今後は実機を用いたさらなる検証につなげていくという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ドローン:テラドローンがクラウド解析サービスをアップデート、データ管理機能を強化
Terra Droneは、自社開発のUAVレーザ「Terra Lidar」シリーズのクラウド解析サービス「Terra Cloud」について、データ管理の強化や点群ビュワーの拡張などのアップデートを行った。 - スマートメンテナンス:“ガス漏えい”を検知する携帯型レーザーをJFEら3社が開発 2025年に販売開始
JFEスチールと東京ガスエンジニアリングソリューションズ、ガスターは、ガス漏洩を高感度に検知する携帯型レーザー式の検知器を開発した。今後、量産化に向けて検討を進め、2025年の販売開始を目指す。 - CIM:精度5cmのSLAM技術を用いたTerra Droneのハンディ型3Dスキャナー 平面図作成やICT測量に活用
Terra Droneは、精度5センチのSLAM技術を用いたハンディ型3Dスキャナー「Terra SLAM RTK」を発売した。既存の測量手法を組み合わせることで、測量平面図の作成やICT起工/出来形の測量に活用できる。 - 第6回 建設・測量生産性向上展:陸域や浅水域で使えるグリーンレーザースキャナーシステムの新モデル、アミューズワンセルフが開発
アミューズワンセルフは、陸域や浅水域で使えるグリーンレーザースキャナーシステム「TDOT 7 GREEN」を開発した。水に吸収されにくいグリーンレーザーを照射することで、地上から水面下までの地形をシームレスに3Dで可視化する。 - AI:生成AIとIoTで建設現場の“unknown”を無くす!西松建設の工事で4割時短したMODEの頼れるAI部下
MODEは、生成AIとIoTのチカラで、建設業界を筆頭に多様な産業の課題解決を目指すスタートアップ企業。IoTは、データを集約して可視化するプラットフォーム「BizStack」が、既に前田建設工業など複数のゼネコンで活用されている。今回、生成AIを最も現場をよく知る作業員の部下やアシスタントとした機能を追加。先行導入した山岳トンネル工事では、40%の時間削減などの効果が得られているという。 - 現場管理:パイプ探査ロボ「配管くん」の同行営業も含む受注支援サブスク開始 設備会社の市場開拓に
弘栄ドリームワークスは、パイプ探査ロボット「配管くん」を用いた受注活動のサブスクリプション支援サービスを開始した。配管調査時の操作サポートだけでなく、同行営業や現場調査、書類作成といった営業活動もトータルで支援する。