一般建物の構造材木質化技術を実用化、日建設計が建設時CO2排出量1割削減へ:木造/木質化
日建設計は、建築物の床や壁面などにおける構造材木質化技術を実用化した。新技術による木材活用により、建設時のCO2排出量を約10%削減できる見込み。
日建設計は2050年の脱炭素社会の実現に向け、建築物の床や壁面などの構造材で木質化技術を実用化したと2024年5月16日に公表した。新技術は「木質合成床」「高耐力高靭性型CLT耐震壁」「耐火木材用柱梁(ちゅうりょう)接合部」の3つで、木材を他の建材と組み合わせることで弱点をカバー、もしくは木材をそのまま用いて、従来の強みを生かしながら建築への木材導入を行うものだ。
建築の床、壁、接合部で、新たな木質化を促進
木質合成床は、鉄筋コンクリートと木材を組み合わせハイブリッド化した。法律上求められる耐火性能と耐力は、鉄筋コンクリート部分で満たしつつ、炭素を固定や床材として軽量化することで柱梁などへの負担を減らし耐震性を向上した。
高耐力高靭性型CLT耐震壁は、鉄骨造の建築でも耐震壁として木材を取り入れやすくする技術だ。耐力や靭性を高めたCLT耐震壁を施すことで、鉄骨造を支える耐震壁として機能できる。CLT耐震壁と木質合成床は、現在設計中の商業ビルのプロジェクトで既に適用が始まっている。
耐火木造用柱梁接合部は、木部の割裂補強技術の開発で、木部より先に工業製品の鉄部を安定的に破壊させることで安全性を追求した。中高層建築で鉄骨と木材を組み合わせることはもちろん、複数の企業が開発した仕様の異なる木柱や木梁であっても融合して接合できる。現在は、個別評定の取得を計画中で、中高層建築での木材活用促進に向け、社会で広くオープンに利用できる手法も検討する予定だ。
日建設計の試算によると、今回開発した技術を用いることで、地上11階建ての建築であれば、鉄骨造に比べて建物全体で約10%(躯体では約20%)のCO2排出量を削減できる見込みだという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 建築物の木造化/木質化:非住宅建築分野の木造/木質化の拡大へ、飛島建設とナイスが合弁会社設立
飛島建設とナイスは、非住宅建築分野の木造/木質化の拡大を目指し、2024年6月3日付で合弁会社「ウッドエンジニアリング」を設立する。資本金は1億円、出資総額は2億円で、両社が折半出資する。 - 産業動向:羽田空港に木造/鉄骨ハイブリッド構造のサテライト施設建設 2026年夏に供用開始へ
日本空港ビルデングは、羽田空港の第1ターミナル北側に、羽田空港では初となる木造/鉄骨ハイブリッド構造の出発/到着ゲート施設を建設する。2026年夏頃の供用開始を目指す。 - 施工:木造ハイブリッド構造の賃貸マンションを開発、第一生命グループ初
第一生命グループの相互住宅は、神奈川県横浜市に木造ハイブリッド構造の賃貸マンション「フレンシア青葉台」を新設した。柱などの構造体の一部の他、内装/外装の仕上げ材の一部に木材を採用し、合計約27.2立方メートルを木質化した。CO2固定量は約15.3トン。 - 産業動向:非木造の15兆円超市場へ“木造化”で参入 SDGsの木造建築会社へ、AQ Group
AQ Groupは、「普及型純木造ビル」で日本の街並みに木造建築物を復興する「Re:Treeプロジェクト」を始動する。国内で普及している木材や構法を用い、5階建て以下の木造ビルや木造マンション、木造商業ビルを展開し、SDGsを標ぼうする木造建築会社を目指す。 - 施工:熊谷組と住友林業が“ロシア産材の確保困難”で、KS木質座屈拘束ブレースに国産材含む2樹種を追加
熊谷組と住友林業は、共同で開発した「KS木質座屈拘束ブレース」に国産材を含む2樹種を追加し、新たに構造性能評価を取得した。 - プロジェクト:第一生命と清水建設の1000m3の木材を使用する木造ハイブリッド構造賃貸オフィスビルが、サステナブル建築物先導事業に採択
第一生命保険は、清水建設の技術協力のもとで計画している木造ハイブリッド構造の賃貸オフィスビルが、国土交通省の木造先導型「サステナブル建築物等先導事業」に、保険業界では初めて採択された。ビルの想定規模は、地上12階地下2階建てで、高さは約56メートル、延べ床面積は約1万6000平方メートルとなる見通し。