アジアでも類を見ない“2500t吊り”ローラークレーンをDENZAIが導入 洋上風車の巨大化に対応:導入事例
DENZAIは、大型化する洋上風車の建設に対応すべく、2500トン吊りクローラークレーン「LR12500-1.0」の導入を決めた。
DENZAIは2024年4月25日、独Liebherr(リープヘル)製の2500トン吊(つ)りクローラークレーン「LR12500-1.0」の導入を決定したと発表した。
LR12500は最新型のクローラークレーンで、日本国内やアジア太平洋地域では最初の導入となる。2024年4月23日には、Liebherr本社で鍵のハンドオーバー・セレモニーが開かれ、2024年7月にドイツの工場から出荷し、同年10月に韓国蔚山でS-OILのShaheen Projectで稼働を開始する。
作業半径48mで、951tまで吊り上げ可能に
DENZAIグループは、1972年の北海道室蘭市で創業した重量物輸送や重機建設の会社グループで、DENZAIはグループ持株事業統括会社。「“大きなもの”を動かしたいというニーズに最適な解決策で応える」をPurposeとし、「世界トップシェア、最高品質の重機建設業者を造る」ことをVisionに掲げる。
2500トン吊りクレーンを導入した背景は、洋上風車の建設で、風力の発電量が上がるにつれ、高さや重さで巨大化が進み、今後もさらに巨大化することが見込まれることがある。これまで保有していたクローラークレーンは、1350トン吊りが最大で、対応できなくなることも懸念された。
また、国内で進む洋上風力建設のラウンド1、ラウンド2で、タワーの重さも欧州仕様と異なり、日本仕様での重さは今以上に重くなることが想定されている。さらに欧州に比べ日本は岸壁の強度が低い港湾もあり、岸壁より離してクレーンを設置しなければならないため、クレーンの作業半径が大きくなってしまう。ナセルの重さが800トンを超えてきた場合、1350トン吊りクレーン1台では作業船奥側のナセルを吊り上げることが困難で、1350トン吊り2台が必要になる。
今回採用を決めたLR12500であれば、作業半径48メートルで、951トンまで吊り上げられる。そのため、1台でラウンド1、ラウンド2での洋上風力の高さや重さの要件を満たし、その後に見込まれる浮体式洋上風力発電所のクレーンによる洋上風力の部材の組み立てや建設にも応じる。
DENZAI 代表取締役社長 CEO 上村浩貴氏は、「日本に現有する大型クレーンでは、15MW(メガワット)級の風力発電機の組立てが限界だ。ラウンド2以降の着床式洋上風力案件では15.5MW級、浮体式洋上風力案件では18MW級の風力発電機が検討されており、発電機の大型化に合わせたクレーンの導入が欠かせない状況にある。日本にあるクレーンの吊り能力が風力発電開発の限界を決めてはならないと、国内専業大手としては考え、2500トン吊りクローラークレーンの導入を決めた。国内はもとより、中国を除くアジア最大の吊り能力を持つ移動式クレーンとなる」と経緯を説明する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 産業動向:日産のEV中古バッテリーを現場用発電機の代わりに 建機給電で道路舗装も切断
第一カッターとブルースカイテクノロジーは、可搬式蓄電池のプロトタイプを共同開発した。EVのリユースバッテリーを用い、パワーコンディショナーで道路舗装を切断する電動建設機械などを駆動できる。 - 建機自動化:新丸山ダムの盛土工事で計画〜建機施工〜品質管理の自動化に成功、大林組
大林組は施工計画から品質管理までを自動化する「統合施工管理システム」を開発した。新丸山ダム工事に適用し、複数建機の自律運転による盛土施工と計測ロボットを使った品質管理を行う実証施工に成功した。 - 製品動向:建設機械を無人レンタル、スマート端末で物理キー受け渡し レンタル会社向けに提供
アースカーは、建設機械のレンタル会社向けに、スマートボックス端末を利用して建機を無人で貸し出すシステム「WORKCAR」の提供を開始した。人手を介さずに車両キーを受け渡しで車両キーを受け渡しでき、防犯と与信の観点から、これまで取引のある法人に利用を限定することも可能だ。 - スマートコンストラクション:ブルドーザー自動運転システムを構築、自律施工型建機の開発を推進 清水建設
清水建設と自動車部品メーカーのボッシュエンジニアリング、山崎建設は共同で、盛土工事に使用するブルドーザーの自動運転システムを構築し、実機を使用して運転制御や物体検知、緊急停止などの要素機能の実効性を確認した。今後、ブルドーザーの環境認識機能を高度化し、自律施工型ブルドーザーの開発を進める。 - 脱炭素:GX建機認定制度に「電動油圧ホイールクレーン」を追加
国土交通省は、建設施工現場の脱炭素に向けて電動建設機械の普及を図る「GX建設機械認定制度」の対象機種に、電動油圧ホイールクレーンを追加する。従来の認定対象だった電動油圧ショベル、電動ホイルローダーとあわせて、認定対象は3機種に拡大した。 - 地場ゼネコンのDX:「建設業のICT投資は今が好機」と語る、インフラDX大賞を受賞した地場ゼネコン「金杉建設」が抱く危機感とは
埼玉県に本社を置く地場ゼネコンの金杉建設は、ドローンや3Dスキャナー、ICT建機などのデジタル技術に早期に着目し、2015年から施工現場への積極的な導入と内製化を進めてきた。2023年2月には、その取り組みが評価され、「インフラDX大賞」の国土交通大臣省を受賞。これまでの挑戦とデジタル技術活用にかける思いについて、金杉建設 代表取締役社長 吉川祐介氏に聞いた。