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「建設業のICT投資は今が好機」と語る、インフラDX大賞を受賞した地場ゼネコン「金杉建設」が抱く危機感とは地場ゼネコンのDX(1/3 ページ)

埼玉県に本社を置く地場ゼネコンの金杉建設は、ドローンや3Dスキャナー、ICT建機などのデジタル技術に早期に着目し、2015年から施工現場への積極的な導入と内製化を進めてきた。2023年2月には、その取り組みが評価され、「インフラDX大賞」の国土交通大臣省を受賞。これまでの挑戦とデジタル技術活用にかける思いについて、金杉建設 代表取締役社長 吉川祐介氏に聞いた。

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 インフラの老朽化が社会問題として注目される中、その整備や維持管理を担う建設業では労働力不足に直面している。課題の解決に向けては、担い手の処遇改善や働き方改革に加え、ICT(情報通信技術)の活用やDX推進により生産性を高め、高効率で品質の高い工事を行っていくことが不可欠だ。

 埼玉県春日部市に本社を置く地場ゼネコンの金杉建設は、ドローンや3Dスキャナー、ICT建機などのデジタル技術に早くから目を向け、施工現場への導入を積極的に進めてきた。同時に、ICTの一層の活用を目的として、ソフトや機器を従来のリース/レンタルから徐々に自社所有に切り替え、内製化を推進してきた。

 こうした建設プロセス高度化の取り組みの成果として、2023年2月には、国土交通省「インフラDX大賞」の最高賞である国土交通大臣省を受賞。埼玉県発注の橋の架け替えに伴う迂回路整備工事でのデジタル技術活用が評価されたものだ。

 金杉建設 代表取締役社長 吉川祐介氏は「地域のインフラを地場の建設業が支え続けて行くには、デジタル技術の導入で業界全体の生産性を向上する必要がある。今は間違いなくICT投資の好機だ」と話す。同社のこれまでの挑戦とデジタル技術活用にかける思いについて、吉川氏に聞いた。

金杉建設 代表取締役社長 吉川祐介氏
金杉建設 代表取締役社長 吉川祐介氏 筆者撮影

初の本格的なICT施工で残った課題 外注から内製化に舵

 金杉建設は主に公共工事を手掛ける地場ゼネコンで、1950年の創業以来、約70年にわたり地域のインフラ整備に関わってきた。同社が初めて本格的なICT施工に取り組んだのは2015年。国交省が発注した利根川上流での築堤盛土工事でのことだった。金杉建設には当時、ICT施工に関する知見がなく、ドローンによる測量や3D設計データの作成、ICT建機などを、外部の専門業者に外注、レンタルして工事を行った。

 工事自体は発注者から表彰を受けるなど高い評価を得たが、一方で、課題も残った。「外注に任せた結果、コストが増加したことに加え、機器やデータの取り扱いなどICT施工に関する知見が自社に残らなかった。ICT活用を進めるためには、当社の技術者が率先して関与する必要があると痛感した」

 2016年に国交省が「i-Construction(アイコンストラクション)」の推進を本格化したことも、投資判断に影響した。今後、公共工事でのICT指定工事拡大や、評価点への影響が予想されたためだ。金杉建設ではICTの内製化を会社目標として定め、機器やソフトなどの自社所有に舵を切った。現在では建設機械の保有、オペレーション、3Dデータ作成や分析まで、自社で行っている。

 内製化に際してこだわったのは、複数のメーカーの機器を組み合わせて使用することだ。「メーカーを問わず常に最先端の機器を導入したい」との思いから、測量機と建設機械の互換性などについてもさまざまなメーカーからヒアリングを行い、理解や協力を得られた企業の機器を中心に導入を進めた。

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