非破壊の超音波厚さ検査が可能に、球体ドローン用の「UT検査ペイロード」今夏発売:ドローン
ブルーイノベーションは、球体形測量ドローン「ELIOS 3」専用「UT検査ペイロード」の提供を開始する。ELIOS 3に装着することで、ドローンを用いた遠隔での超音波厚さ測定が可能になる。
ブルーイノベーションは2024年4月9日、Flyabilityの屋内点検、測量ドローン「ELIOS 3」向けの「UT検査ペイロード」の提供を開始すると発表した。運用サービスを同年5月7日、販売を同年7月にそれぞれ開始する予定だ。
プラント施設や道路橋などのインフラ施設で、ドローンの非破壊厚さ点検が実現
UT検査ペイロードは、ELIOS 3開発メーカーのFlyabilityが、超音波厚さ計測機器メーカーCygnus Instrumentsと共同で開発した。ELIOS 3に搭載することで、ドローンを用いた遠隔での超音波厚さ測定が可能となる。プラント施設や道路橋、トンネル、下水道といったインフラ施設、船舶ドック、自動車や飛行機の工場などの非破壊厚さ点検に適する。従来は、足場や特殊な機材などが必要だったを点検対象箇所でも、遠隔のため、安全で効率的、低コストなドローンを用いた超音波厚さ測定が実現する。
ELIOS 3向けの「測量ペイロード」とUT検査ペイロードを併用すれば、外観目視検査や厚さ測定、測量などの複数の点検作業がELIOS 3のみで完結する。UT検査ペイロードは、超音波を発信するプローブ(探触子、接触する部分)を備える「ヘッド」と、機体とヘッドをつなぎ狭小空間で折りたためる「アーム」、プローブから発信される超音波を点検対象に伝達するゲル状カプラント(接触媒質)の「カプラントディスペンサー(塗布装置)」から成る。
プローブそのものは、点検対象に応じ、コーティングなどの減衰材料用「2MHz」、 汎用、深刻な孔食または腐食のある壁を対象とする「5MHz」、ボイラーチューブなどの小径パイプや腐食した薄板などに対応する「7.5MHz」から選べる。
点検対象物の表面に付着物があり、測定が難しい場合は、プローブヘッドを清掃用モジュールに交換して清掃。清掃後、その位置を位置特定機能でマークできるため、一度機体を戻してからプローブヘッドを交換し、再測定時にもパイロットは迷うことなく同じ位置で測定を行える。
測定時には、プローブヘッドからレーザーポインターを照射することで、照準を定められる。測定結果は、操縦専用アプリ「Cockpit」でリアルタイムに表示し、使用するプローブヘッドの種類や清掃用モジュールの必要の有無なども即座に判断できる。
専用の解析ソフトウェア「Inpsector」では、飛行中に記録した位置情報を3Dモデルで表し、結果も同時に表示するため、再測定の必要性などが一目で分かる。
ブルーイノベーションによると、大型船舶のバラストタンクの厚さ測定にUT検査ペイロードを導入したところ、1万5000時間の作業を削減。さらに、測量ペイロードと組み合わせて用いることで、これまで16人以上が担っていた点検作業を2人だけで完了したという。
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