ICT活用で施工管理に変革の兆し 重責ある“5大管理”を効率化!【連載第6回】:建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(6)(1/3 ページ)
連載第6回は、4大または5大管理と呼ばれる建設業の施工管理にフォーカス。施工管理を効率化する建設ICTツールとして、施工管理アプリや特殊カメラ、レベル4解禁後でも普及が進まないドローンなど、それぞれのメリットと現状の課題などを踏まえながら解説します。
前回まで、建設現場における検査/点検業務や安全衛生の課題に対する生産性や効率向上を対象としたシステムを中心に紹介してきました。今回は、「施工管理」の業務改善について説明紹介します。
施工管理業務自体の改善は、建設DXの大きなテーマの一つといえるでしょう。施工管理に携われた経験のある方々にお話を伺うと、数々の苦労がうかがえる大変な業務です。難しいテーマですが、IT業界のエンジニアとして活動する中で感じたことを、建設業界の読者に参考になりそうな点を中心に筆を進めていきたいと思います。
★連載バックナンバー:
本連載では、建設業向けにICT製品を展開している日立ソリューションズの販売チームが、それぞれの専門分野を生かして執筆します。建設業の「働き方改革」につながる現場作業の生産性向上や安全衛生といった身近な業務改革を中心に、実例をベースにお伝えしたいと考えています。
施工管理の難しさ
建設業界のさまざまなお客さまと接する中で、よく話に出るのが、「施工管理の難しさ、煩雑さ」です。施工管理の主な業務は、「工程管理」「安全管理」「品質管理」「原価管理」で、“4大管理”とされており、それぞれ責任の重い業務です。最近では、環境問題に対する意識の向上に伴い、「環境管理」も含めて“5大管理”とも呼ばれています。責任と業務がさらに重くなってきているといえるでしょう。
そもそも作業量が多い、新しい施工技術や手法が投入されるたびに勉強しなければならない…といった話もありますが、これらも含めて施工管理の難しさに関する要因は、大きく以下の2点にあると推察しています。
(1)目視による確認作業と紙を主体とした管理
施工管理業務は、進捗報告など一部でデジタル化が進んでいるとはいえ、全体的に紙管理を主体としたアナログ手法が中心という実態があります。アナログ手法の場合、タイムリーな情報共有、情報管理、可視化が難しく、煩雑で時間も掛かってしまいます。
施工管理とは要約すると、「建設土木工事の作業が、品質や原価、安全面も含めてスケジュール通りに進むよう全体を把握しながらマネジメントする業務」です。アナログが主流の現場で、効率的な情報共有や進捗の可視化が難しければ、スケジュール遂行のために現場と管理者が頑張らざるを得ないのが実情でしょう。
(2)幅広く豊富な経験が必要
(1)のような状況もあり、施工管理者は現場経験を多く積み、技術や知識を持っていないと、施工結果に対する的確な判断や指示が難しいとされています。
また、現場の作業員をまとめるコミュニケーションスキルも重要で、やはり場数をどれだけ踏んできたかが重要になります。場数といっても、小規模の建屋建築から、中高層のビルディング建設、大規模再開発事業や公共事業と、さまざまな形態や規模のプロジェクトがあるため、幅広く現場経験を積んだ管理者は貴重な人材です。一方で、ベテラン管理者の高齢化に伴う離職も進んでいます。管理者の育成には時間を要し、一朝一夕で解決できる問題ではありません。
(1)に関しては、ICT導入で多くのことが解決できると考えており、既に一部業務ではICTが採用されて改善も進んでいます。
(2)に関しても、ICT導入により知識や経験をデジタル化して活用することが可能です。現場経験の浅い管理者をICTでサポートすることで、人材育成にもつながります。最近はやりのAI技術と親和性が高いと考えています。
ICT導入で全てが解決するわけではありませんが、管理の効率化や品質の平準化、デジタル化による経験の継承などは、ICTの得意分野でもあります。
次の章では、施工管理業務で導入が進んでいるICTツールや技術に関して話を進めていきましょう。
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