AIでコンクリート骨材の粒径/種別を判別する入荷管理システムを開発、熊谷組:スマートコンストラクション
熊谷組は、コンクリート骨材のAI入荷管理システムを開発した。粒径や種別を高精度に判別し、OCRで読み取った入荷伝票と照合して誤投入や誤搬入を防ぐ。入荷量も伝票から認識し、骨材ごとの入荷量を自動集計する。
熊谷組は2024年3月27日、AIによりコンクリート骨材の粒径や種別(岩種)を高精度に判別し、OCRで読み取った入荷伝票と照合して誤投入や誤搬入を防ぐ入荷管理システムを開発したと発表した。入荷量も伝票から認識し、骨材ごとの入荷量を自動集計する。さらに、事前の学習データに基づいて、骨材粒度分布の推定も可能で、品質変動をリアルタイムに把握できる。
入荷管理システムは、ダンプトラック進入路に設置した伝票読み取り装置と骨材判定ディスプレイ、骨材投入ホッパ上部の骨材撮影用カメラとLED照明、荷卸し確認用回転灯、材料試験室の判定用PCとモニターから成る。
搬入した骨材をダンプトラックから荷卸しせずに判別するため、ベルトフィーダやコンベヤーに搬送される前に誤投入や誤搬入を防止する。細骨材から大粒径の粗骨材まで短時間で判別し、コンベヤー上での連続判別も可能だ。また、骨材画像と伝票、トリッパーベルコンの切り替え位置とを照合することで高精度に特定できる他、カラー画像を使用した骨材の岩種判別や粒度分布(粗粒率)のAI推定にも対応する。
AI入荷管理システムの導入効果は、伝票集計作業を手作業で行う場合と比較して作業時間を約95%削減し、伝票処理の省力化が実現する。
将来は、他の骨材の運搬管理システムやCIMなど、建設DXへの展開も想定している。
ダム建設現場で運用を開始
熊谷組が高知県内で建設を進める重力式コンクリートダム「春遠第1ダム」(堤高31メートル、堤頂長112メートル、堤体積2万7500立方メートル)の現場で、2023年8月にシステムを導入し、2024年1月から運用を開始した。
システム導入時のディープラーニングによる学習モデルは、ダンプトラック2台の骨材撮影画像をそれぞれ9分割し、上下、左右のミラー画像と回転画像を作成して、216枚の画像を教師データとして構築した。
導入後、粗骨材のAIによる画像判定は100%、伝票読み取りOCRとコンベヤー切替えについても全ての骨材で100%だった。粗骨材G1(40〜20ミリ)の搬入時に、伝票OCRでは宛先間違いの伝票を2枚、コンベヤーの切り替え待ちについてプラント操作側の確認不足を1回検出した。
一方で細骨材は、教師画像と大きく異なる画像が4枚ある場合、現時点では正しいAI判定が行えない。ダム本体のコンクリート打設が始まる2024年5月までに、より多くの骨材画像を教師データに加え、学習モデルを再構築して判定の信頼性の向上を図る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 現場管理:自律走行型の床面ひび割れ撮影装置を開発、1500m2を半日で検査 熊谷組の現場で活用へ
熊谷組は、床面検査の省力化を目的に、自律走行機能を持つ床面ひび割れ撮影装置を開発した。大規模な建造物でも少人数かつ少ない操作で床面検査が可能で、腰を屈めて行う目視検査が不要になるため、作業員の肉体的負担も軽減する。まずは熊谷組の現場に導入し、検査実績を重ねながら運用方法の確立を目指す。 - スマートコンストラクション:熊谷組、汎用機に実装できる吹付けコンクリート遠隔操作システムを開発
熊谷組は、汎用機械に容易に実装できる吹付けコンクリートの遠隔操作システムを開発し、九州電力発注の黒川第一発電所工事で施工を行った。遠隔作業を行ったオペレータや協力会社からは「遠隔吹付け作業を日常的に運用しても問題ない」との評価を得た。 - 現場管理:吊り荷直下への侵入をAIとGNSSでリアルタイム監視 熊谷組が安全システム開発
熊谷組は、AIとGNSSを活用し吊り荷直下への侵入者をリアルタイムで監視できる安全システムを開発した。危険エリアへの侵入時には警報装置で注意喚起する。また、吊り荷真下をLED投光器で照らして可視化し、事故を未然に防ぐ機能も搭載した。 - AI:トンネル施工で軌道装置内の“人の立ち入りをAIで検出”、熊谷組とアクティオ
熊谷組とアクティオは、トンネル施工時に軌道装置内への作業員の立ち入りをAIで検出する「軌道装置接近警報システム」を開発した。脱着可能なカメラと警報出力機構を一体化し、AIの画像処理で、安全通路にいる人は除外して、軌条内にいる人物のみを検知する。 - 施工:鉄骨造とCLTとのハイブリッド構造の適用範囲を拡大、熊谷組
熊谷組は、鉄骨造とCLTのハイブリッド構造「木質耐震垂れ壁構法」の適用範囲を拡大した。垂れ壁部材の寸法や柱スパンにも、新構法の対象が広がったことで、多様な建物や多くの箇所に木材活用が期待される。 - AI:クレーンワイヤの外観目視点検を自動化、AIで良否判定 熊谷組とパシフィックシステムが開発
熊谷組とパシフィックシステムは、クレーンワイヤの外観目視点検をAIで自動化するシステムを開発した。ワイヤ表面の傷やほつれなどを高い精度で連続的に検査し、不良部分を特定することで、クレーン楊重作業時の安全性が向上する。