吊り荷直下への侵入をAIとGNSSでリアルタイム監視 熊谷組が安全システム開発:現場管理
熊谷組は、AIとGNSSを活用し吊り荷直下への侵入者をリアルタイムで監視できる安全システムを開発した。危険エリアへの侵入時には警報装置で注意喚起する。また、吊り荷真下をLED投光器で照らして可視化し、事故を未然に防ぐ機能も搭載した。
熊谷組は2024年2月20日、建設現場でのクレーン作業時に、AIとRTK-GNSSにより吊(つ)り荷直下への侵入者をリアルタイムで監視できる安全システムを開発したと発表した。危険領域に入った作業員を瞬時に認識して警報装置で注意喚起する。また、吊り荷の真下をLED投光器で照射することで、人の侵入を防止する機能も搭載した。
AIとGNSSを組み合わせ、クレーン吊り荷直下の危険エリアへの侵入を常時監視
熊谷組が開発した安全システムでは、Webカメラで工事エリア内を撮影し、移動中の吊り荷と人の位置を、鳥瞰(ちょうかん)図(平面座標)上に表示する。人の位置は、カメラの設置高さと画像角度のパターンをシステムが学習し、位置座標をGNSSで取得して計算する。吊り荷の位置は、クレーンのブーム先端に取り付けたGNSSデバイスでリアルタイムに座標を取得する。
危険領域に作業者が侵入すると、AIが人物認証してシステムが瞬時に検知し、警報装置(LEDフラッシュライト)で周囲に注意喚起する。システムのアプリケーション画面に「近接検知」を表示し、遠隔でもスマートフォンなどで危険な状況であることを確認できる。
また、吊り荷位置の座標を認識できる電動雲台の上にはLED投光器を設置した。吊り荷の真下を自動追尾して照射し続け、視覚的に人の侵入を防止する。
なお、GNSS装置はネットワークを介して補正情報を受信するRTK(リアルタイムキネマティック)方式に対応し、フックブロックの水平座標を数センチメートルの誤差で追随できる。
実証では、再現率97.6%を記録
熊谷組は中央新幹線の東雪谷非常口新設工事で2023年10〜11月の期間、安全システムの実証実験を行った。
クレーンの吊荷直下半径3.1メートルの危険領域に入った場合、警告の判定を出し、フラッシュライトを動作させた。また、クレーン吊荷の直下を青色レーザービーム光で照射し、可視化した。
AIが危険と判定した事例で真に危険だった割合(再現率)を確認したところ、97.6%となった。この結果について熊谷組は「再現率が非常に高く、監視員を配置した場合と同等の効果が得られる」としている。
今後は、監視カメラの高性能化やAI画像判別のための学習量増加によるカメラ映像内の人検知の高精度化と、電動雲台や制御盤の小型化を行い、幅広い建設現場での採用を目指す。また、AIは車両/重機も認証できるため、人との接近や接触を監視するシステムへの応用も検討していく。
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