クレーンワイヤの外観目視点検を自動化、AIで良否判定 熊谷組とパシフィックシステムが開発:AI
熊谷組とパシフィックシステムは、クレーンワイヤの外観目視点検をAIで自動化するシステムを開発した。ワイヤ表面の傷やほつれなどを高い精度で連続的に検査し、不良部分を特定することで、クレーン楊重作業時の安全性が向上する。
熊谷組は2023年12月26日、パシフィックシステムと共同で、クレーンワイヤの外観目視点検を自動化する「クレーンワイヤー全周囲外観検査システム」を開発したと発表した。AIでワイヤ表面の傷やほつれなどを高い精度で連続的に検査し、不良部分を特定することで、製造業に次ぎ多発している建設業のクレーン揚重作業での労働災害を防ぐ。
今回開発したシステムは、エリアセンサーカメラ4台を使用し、ワイヤロープ巻下げ中に全周にわたって不良部分を検査、特定する。カメラと照明の「撮影ユニット」、撮影したデータから良否を判定する「処理ユニット」、判定結果の確認と検査の起動遠隔操作を行う「閲覧ユニット」から成る。
不良部分の判定には、良品の教師データで学習させたAIによるアノマリー判定(教師無し異常検知)と、ヒートマップによる画像処理(二値化処理)を活用することで判定精度の向上を図る。撮影箇所に異常があれば欠陥情報として表示し、欠陥位置も特定する。
16カ月の試験運用で信頼性を確認 判定精度をさらに向上へ
両社は同検査システムを、シールド現場の防音ハウスに架設された天井走行クレーン(定格荷重10トン)に導入し、16カ月の試験運用を実施した。
運用中の異状データを解析したところ、軽微なごみの付着に対する異状の判定、異状位置の繰り返しの判定が行えていることから「判定の信頼性がおおむねあることが確認できた」としている。
しかし画像では確認できない異状判定も散発的に存在しており、今後は判定精度をさらに向上するとともに、さまざまな機種に対応できるよう改善を重ね、本格運用に向けた準備を進める。
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