自律走行型の床面ひび割れ撮影装置を開発、1500m2を半日で検査 熊谷組の現場で活用へ:現場管理
熊谷組は、床面検査の省力化を目的に、自律走行機能を持つ床面ひび割れ撮影装置を開発した。大規模な建造物でも少人数かつ少ない操作で床面検査が可能で、腰を屈めて行う目視検査が不要になるため、作業員の肉体的負担も軽減する。まずは熊谷組の現場に導入し、検査実績を重ねながら運用方法の確立を目指す。
熊谷組は2024年3月21日、床面検査の省力化を目的に、自律走行機能を持つ床面ひび割れ撮影装置を開発したと発表した。大規模な建造物でも少人数かつ少ない操作で床面検査が可能で、腰を屈めて行う目視検査が不要になるため、作業員の肉体的負担も軽減する。まずは熊谷組の現場に導入し、検査実績を重ねながら運用方法の確立を目指す。
装置を使用して検査を行う際、現場で実機によるスキャンを行う必要はなく、事前に入力した環境地図情報とセンサー情報を照合して自己位置推定を行う。
環境地図は施工図面をもとに、柱や壁の配置情報を専用ソフトウェアに入力して生成する。専用ソフトウェアは計測エリア全体を一度の走行で効率的に巡回する経路の探索機能も備えており、これにより検査エリア全面を自律的に走行し、ワンアクションで検査開始から終了までを実行できる。
また、撮影フェーズとひび割れ検出フェーズは独立しており、ひび割れ検出は後工程で、任意の手段で検出処理を行う。
装置は重さ80キロ、サイズは1030(幅)×1100(高さ)×840(奥行き)ミリで、両サイドの照明パネルを本体内部に格納すればワンボックスカーで運搬可能だ。メカナムホイール(全方向駆動車輪)を採用し、床面を撮影するための蛇行運転もスムーズに行える。広範囲を撮影するため、1230万画素のカメラを2台備える。最大移動速度は時速2キロ、1500平方メートルの検査で約半日を見込んでいる。現場ごとにオペレーターを2人配置し、複数台同時運用を想定する。
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