建設現場の労災未然防止にAI活用、東急建設がUNAIITのシステム導入:現場管理
東急建設は、労働災害未然防止活動の強化を目的に、自社用にカスタマイズした労働災害事例検索システムと、対話AIを活用して過去の災害事例や作業のリスクを示す「災害GPT」を導入した。
東急建設は2024年3月18日、労働災害未然防止活動の強化を目的に、労働災害事例検索システム「K-SAFE(東急建設カスタマイズ版)」と、対話AIを活用して過去の災害事例や作業のリスクを提示する「災害事例ChatGPT powered by GPT-3.5」を導入したと発表した。いずれもUNAIITが提供するシステムで、2023年12月から国内工事で運用している。
作業員に「気付き」をもたらす2つのシステムを導入
今回導入した2つのシステムは、災害事例の検索性の高さに加え、文章だけでは伝わりづらい情報を視覚化して、作業者が容易に理解できる形で提供する。これにより、作業員に「気付き」を与え、現場での事故防止につなげることが狙いだ。
K-SAFEは、厚生労働省と日本建設業連合会(日建連)の公開データをもとに、ユーザーが入力した作業内容と類似する災害事例を検索するシステム。入力内容をもとに、独自開発のAIエンジンで事例を探索、分析し、作業のリスクを発生頻度や事故の重大度に応じて注意喚起する。東急建設カスタマイズ版では、既存データに加え、東急建設の災害事例を搭載する。ユーザーは災害事例とともに、東急建設独自の通達やリマインドのデータも検索可能だ。さらに、イメージ図を表示するカスタマイズを行うことで、文字情報だけではなく視覚化機能も追加した。
また、災害事例GPTは、類似する災害事例を探せるだけでなく、例えば「足場の解体作業を行う際に気を付けたほうがいいこと」など、入力した作業内容に関する注意点や対策について対話形式で回答を得られる。生成された回答は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のデータに基づいており、事実に基づかない情報の生成を回避する。今後、東急建設や日建連の災害事例データに加え、労働安全衛生法や労働安全衛生規則などの建設業に関わる法令に基づく回答も得られるように改修を行う予定だ。
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